(写真:Shutterstock)
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 今回は「誇りある職場」についてあれこれ考えてみる。

 「上げろ! 上げて~! なぜ、上げてくれない~~!!」と、賃金アップへのプレッシャーと悲鳴が入り交じる中、日本酒「獺祭(だっさい)」蔵元の旭酒造(山口県岩国市)が、大卒新入社員の初任給を、従来の月額21万円程度から30万円に引き上げると発表した(2022年・2023年製造部入社社員が対象)。

手間をかけた高品質

 同社では2022年に「5年で平均基本給を2倍」にすることを目標に掲げ、26年度には製造部の給与を、21年度比で2倍以上にすることを目指すプロジェクトをスタートした。つまり、今回大々的に報じられた新卒社員の初任給アップだけではなく、既存社員の賃金も26年まで、段階的にベースアップを実施するという。

 この報道がされるや否や、SNSには「いいなぁ~獺祭」「他の会社も見習ってほしい」「30万で話題になる日本ってどうよ?」「そうだよ。みんな低賃金に慣れすぎ」といったコメントが多数書き込まれた。

 一方で、「賃金だけ上げても、他の労働条件はどうなんだよ」「新人優遇は中堅のやる気を損なう」「もともと人件費にかけていた金が少ないのでは」などの批判コメント、いや、うがった見方をする意見もあった。

 しかし、私が知る限り“窮地”を経験したことのある企業は大丈夫だ。飴をしゃぶらせるようなことはしない。素直に今回の英断に、獺祭、いやいや喝采を送ればいい。

 「もうダメかも!」という危機に直面しながらも、なんとかかんとか踏ん張ってきた長寿企業のトップは、会社を支えるのは「現場=人」という経営の当たり前が、骨の髄までしみ込んでいる。

 実際、 食品産業新聞社の記事によれば、同社は賃金など処遇以外の取り組みとして、「酒造りの品質を追求し、技術的挑戦や試行錯誤の場となる高級酒に特化した新規酒蔵の建設を計画している」という。

 さらに、「“手間”による高品質なモノづくりが評価される未来を創りたいと考えている」とした上で、「一握りの成功者が富を独占し、その他大勢の労働者は低賃金労働を余儀なくされる現代の二極化が進む資本主義経済の構造的問題」を解決する一環として今回の賃上げがあり、「高付加価値が評価される市場に踏み込みたい」とした。

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