(写真:Shutterstock)
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 「こんな時期に管理職になっても、いいことなんて一つもないですよ」

 こう話すのは大手企業に勤める40代の男性社員だ。

病んでしまう管理職たち

 “新時代”に向けた業務改善を、上司から「ひとつよろしく!」と命じられ、新型コロナウイルス禍でやる気を失っている部下を育てようにも、コミュニケーションがうまく取れない。コロナ前なら「ちょっといいか?」などと雑談することで、“下”の本音を探ることもできた。

 でも、今はそういった機会は消え、管理職の負担が激増しているという。

 むろん、そうした傾向は、かなり前からあった。“中間管理職”は気の毒なほど、苦労が多かった。

 「管理職になってから、ぐっすりと眠れたことは一度もない」
 「管理職は、日々決断の連続です。しんどいですよ」
 「前例を変えたいと思っていたのに、それができない自分に自信喪失するんです」
 「どうやっても育ってくれない部下がいまして、もう、本当にどうしていいのか分からない」
 ……etc.etc。そんな話を度々聞かされてきた。

 実際、1980年から2005年までの26年の間に死亡した30~59歳男性の、死因および死亡前に就いていた職業のデータを縦断的に分析すると、ストレス性の疾患である心筋梗塞や脳卒中で亡くなる人が、管理職および専門職で増えていることが分かっている。管理職以外では漸減していたのに、管理職では70%も増加。自殺率に至っては、271%と激増した(Wada, K. et al. “Trends in Cause Specific Mortality Across Occupations in Japanese Men of Working Age During Period of Economic Stagnation, 1980-2005: Retrospective Cohort Study”)。

 働き方改革が、これだけ叫ばれ続けているのに、管理職を取り巻く環境は1ミリも改善されず、それどころか悪化の一途をたどっている。コロナ禍で生き残りに必死な上(=上司)からのプレッシャーは最大級に高まり、低賃金に不満を持つ下(=部下)からは「それ、意味あるんっすか?」と突かれ、身も心も果てしないストレスにさらされ、病んでしまう管理職が量産され続けているのだ。

 そんな“病む管理職”を目にすれば、誰だって「管理職になるのは損」と考えて当たり前だ。「若い人たちが管理職になりたがらない」「女性たちが管理職になりたがらない」という嘆きを、コロナ前には散々聞かされてきたけど、“管理職アレルギー”が、40代まで広がっている現実を、経営陣は分かっているのだろうか。

 そこで今回は、「管理職」というかなり大きなテーマで、あれこれ考えてみようと思う。

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