「娘の旦那の給料が、減らされちゃったらしくてね。30代前半は、もともと給料が安いから、残業代が出ないと生活できないんだよ。娘はフリーランスで働いているから、今はほぼ失業状態。来月、出産予定で、もうどうしようもないから、『実家で同居させてくれ』って。もう、仕方がないよね。
夫婦そろって、ワーキングプアだもの。自分とは縁のない世界だと思っていたのに、子供世代は紙一重だよ。一応、そこそこの大学まで出て、コロナ前までは、人並みの生活はできていたんだけどね。なんで、こんなに普通に生き続けるのが難しい世の中になってしまったんだろうね」(by知人)
普通に生活するという夢
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した2020年3月以降、本コラムでは度々「普通の生活」を失った人たちを取り上げてきた。しかし、その「数字」には反映されない「働いている困窮者」が増え続けている。
慶応義塾大学経済学部の大久保敏弘教授による調査分析(NIRA総合研究開発機構「NIRAオピニオンペーパー no.53/2020.sep」 コロナショックが加速させる格差拡大 ~所得格差とデジタル格差の「負の連鎖」~)でも、コロナ禍では、所得の低い人たちほど打撃を受けていることが分かっている(以下のグラフ)。
ご覧の通り、コロナ禍での所得の状況は、600万円以上の層が、2割前後 の減収になったのに対し(「大きく減少」「減少」)、400万未満は軒並み3〜4割減となっている。
下のグラフからは、コロナで大きな打撃を受けたのが、非正規雇用だけではなく、正規雇用でもボリュームゾーンを占める「年収300万円以下の層」であることが分かるだろう。
そして、おそらく今後、こうした人たちはますます増える。今、何とか耐えている人だけでなく、「うちは大丈夫!」と安堵している人でさえ、普通に生活し、マイホームを手に入れるという、家族との夢を諦めざるを得なくなってしまう可能性は極めて高い(以下、「お肉!」と喜ぶ母子と非正規21万人減 見えない貧困急増、から再掲)。
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