
会社を見切るべきか、とどまるべきか――。50代のベテラン社員たちが、“会社との関係”でザワついている。
といっても、1年ほど前からザワザワ感は高まっていた。新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大で、希望という名の絶望退職の足音が、ひたひたと近づいてくるのを察知した「勘の良い人」ほど、具体的に動き出した。
それを人は「決断」と呼ぶ
ところが、コロナの影響が想像以上に長期化したことで、会社も新時代に向けて、生き残りへの“熱”を上げた。「1にデジタル、2にデジタル、3、4がなくて5にデジタル」と新たな企業戦略を練り、「ひとつよろしく!」と社員を鼓舞し、急速に動き出した。会社に裏切られても裏切られても、なんやかんやと会社に尽くしてきた“人のいい会社員”は、「んじゃ、もう一踏ん張り、うちの会社で!」と思い直した。「とどまる」という選択をしたのだ。
……が、やはり「ナニか」が物足りない。思ったほど、“熱”が湧き上がってこない。
ある人は「『勤務先変わりました!』っていきなりのメールだもの。びっくりしたよ」と、次なるチャレンジに進んだ同級生を羨み、ある人は「同期が、希望退職に応募していたことを知りました。45歳定年なんて話も出てるし、どうなんですかね」と曖昧な不安を抱き、ある人は「お付き合いのあった社長さんから、うちに来ないかって言われてるんですけど……」と言葉を濁らせた。
人が物足りなさを感じたり、鬱々とした気分になったりするのは、大抵の場合、本来、心の中で動くべきところが動いていないときだ。動くべき心の部分の正体は、人によって異なるけど、それが意識化されると、具体的に動きたくなる。そして、心が無条件に反応する何かに出合ったとき、「やっぱり会社を辞めよう」「やっぱり大学院に行ってみよう」などと動く決心をする。それを人は「決断」と呼ぶ。
そんな「ザワついているベテラン社員」の方たちの、役に立ちそうな調査結果が公表されたので、今回は、その報告書の一部を紹介しつつ、あれこれ考えてみようと思う。
タイトルは、「ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成~転職者アンケート調査結果」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。
正攻法で、あまり色気のあるタイトルではないけど、なかなかグッとくる。
内容は、「見切る人」と「とどまる人」それぞれの心情が垣間見えるもので、私自身、実に興味深く読ませていただいた。こちらのコラム(「金持ちおじさん、裸で始めたセカンドキャリア」)で「セカンドキャリアを成功させる3つの要因」を書いたが、それを数量的に捉えたものでもあった。
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