宇部中央消防署副士長だった男性は、上司のパワハラや組織の悪弊を告発する遺書を書いて自殺(2019年)。それを受け、弁護士3人による外部調査委員会が報告書をまとめたが、自殺の原因は「職場に抗議の意を示すため」と結論付け、パワハラの存在を認めていなかった。
 しかも、当初、報告書は非公開。消防署側は「遺族の意向」という嘘をついていたのだ。

適切に対応できるための対応

 一方、佐川急便の事件は、社員が亡くなる2カ月前に、見かねた同僚が「2人の課長の行為はパワーハラスメントに該当するのではないか」と内部通報していたにもかかわらず、「パワハラは確認できない」としていた。

  • 別の部署の管理職からみんなの前で、朝礼で叱責される
  • 「なめ切っている」「うそつき野郎はあぶりだすからな!」などのメッセージが送られてくる
  • 直属の上司から「うそつくやつとは一緒に仕事できねえんだよ」と言われ、机の前に立たされて40分以上叱責を受ける

 など、信じがたい行為を2人の課長が行っていたという事実を、他の社員たちも目撃していたのに、内部通報を受けた同社の管理部門は、“2人の課長”にヒアリングをしただけで、「被害者」を守ることをしなかったのである。

 パワハラを受けていた男性は亡くなる前日、妻に「仕事がキャパオーバーだし、明日からどうしよう」と漏らしていた。そして、翌朝、営業所で悲しい選択をしたという。

 一体何のための「相談窓口」なのか?
 本来、相談窓口は被害者を守るために存在するのに、相談窓口が守ったのは「加害者」であり、「会社」だ。

 厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、8割の企業が「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」を行っていると回答している。
 一方で、「相談窓口担当者が相談内容や状況に応じて適切に対応できるための対応」の割合は、すべてのハラスメント(セクハラ、マタハラ、パワハラ)において、たったの4割だった。

 「適切に対応できるための対応」って? 文言が複雑すぎて理解するのがかなり難しい。

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