(写真:Shutterstock)
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 ビジネスパーソンとしても、人間的にも、敬愛する知人が、パワハラで苦しんでいたことを知った。
 異動先の上司に、半年以上にもわたり膨大な業務を課せられ、チームメンバーの目の前で罵倒されるなど、パワハラを受け続けていたのである。

 知人は散々迷った末に、社内のハラスメント相談窓口に連絡。が、結果は予想した通り、「ハラスメント行為は確認できない」と突き返された。
 誰がどう見たって、どう聞いたって、「パワハラ」以外の何物でもない許しがたき行為の数々を、彼は詳細に記録し、証拠になりそうなメールなども添えて相談したのに、「ハラスメント行為は確認できない」と、にべもない15文字で幕引きにされた。

彼で何人目だろう

 彼は多少のことではへこたれないメンタルの持ち主だったのに……ついに折れた。
 心も体も限界を超え、現在、心療内科を受診中だという。

 「人生でこんな経験をするなんて、想像もしていなかった。最初の頃は、そのうち収まるだろうとたかを括(くく)っていました。ところが、次第にエスカレートし、人格を否定するような暴言を吐かれ、明らかに私の業務外の仕事をやらされるようになりました。抵抗すればするだけ、みんなの前で罵倒されるので、感情を消す以外、対処策はなかった。

 でもね、やはりどうしても納得できなかった。
 相談しても意味ないとは考えていたけれど、とにかく公にしよう、と。そうしないと、おかしくなりそうだった。ところが……、予想通りの結果です。第三者に『パワハラ行為は確認できない』と言われたのは、想像以上にきつかった。

 自分では大丈夫だと思っていたんですけどね。こんなになるのも初めてですよ。少しメンタルが回復したら、代理人を立てて交渉しようと考えているのですが、そこまで私が持つかどうか。自分が情けないです」

 彼の会社は、世間的にも名の通った大企業だ。今回はこれ以上具体的なことは書けないけれど、事態の推移次第では実名で取り上げたいほどの卑劣かつ明確なパワハラを、会社は「なかったことにした」。

 彼で何人目だろうか。パワハラに悩み、傷つけられ、メンタル不調に陥る知人が後を絶たない。もちろん、それは私の周りに限った話じゃないであろう。

 先週の木曜(2021年11月25日)には、「『都合の悪いことは無かったことに』 消防で相次ぐパワハラ、命懸けの告発でも変わらないのか」という見出しの記事がSNSに掲載され、その2週間前には、佐川急便の社員が、パワハラで命を絶っていたことが報じられた。

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