私がインタビューをしていて感じるのは、50代の女性たちは結構、ワクワクして働いているということだ。子育てを終えて復職した人も、子育てをしながらずっと会社員だった人も、「新しいチャレンジです!」と自分から転勤を申し出たり、通信制の大学院に通ったり、資格取得を目指したりして、「大変ですぅ」と嘆きつつ、笑顔だった。
かたや、会社にとどまっている男性たちから、ワクワク話を聞くのはまれだ。もちろん中には、「実は……」と小声でチャレンジを話してくれる人もいるが、彼らは例外なく、会社を離れることを決めている人たちだった。
大企業社員の特権意識
そこで今回、20代の若者の声を聞くことができたので、それを紹介しようと思う。
彼は学生時代には、「映像の仕事がしたい」と某制作会社でアルバイトをしていた。ところが、実際に就職したのは映像とは全く関係のない会社で、そこの正社員になった。その理由が、実に今の社会の闇を物語るものだったのである。
「正社員ですから。職種は全然違いますけど、ね。それでいいのかなぁって。まぁ、人並みに生活できれば十分だし、ぶっちゃけ苦労とかしたくないですよ。やりたいことはプライベートでやればいい。好きなことを仕事にできる人とかって、一部の恵まれた人だけだし。
だって、違うんですよ。テレビ局とか商社とか入ってる奴らと、俺らって。スゲーんですよ。あいつら上から目線で……。僕は体デカイし、相手にしないから、アレなんですけど、同級生の中にはそういうプレッシャーにやられちゃう人もいます。これ以上傷つきたくないって、会社とか辞めちゃう人もいました。ま、色々とみんなあるんじゃないですか。
僕? ですか? 大丈夫です。誰も知らないようなちっちゃな会社ですけど、普通に給料もらえてますんで」
……一部の恵まれた人。
全くもってその通りだと思う。
いい家庭に生まれ、いい教育を受け、いい会社に就職する。そんな特権意識を持った大手企業の“下層”社員のとんでもない暴行事件が立て続けに明らかになったのは、今から2年前だ(参考コラム)。
これらの忌まわしい事件は、OB訪問アプリを巧みに使った愚劣な犯行として、アプリの是非が問われたけど、問題はツールの使い方だけにあったわけじゃない。「大企業の会社員」という立場を利用し、“大手病”とも呼ばれる学生たちの大企業志向に付け込んだ、大企業社員の特権意識による「何をやっても許される」という“トンデモ発想”が生んだ事件だ。
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