(写真:Shutterstock)
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 先日、ある企業の部長さんとお話ししたときに、興味深い話を聞いた。

 「最近の若者は、ワクワクするって意味が分からないとか言うんですよ。それで、『仕事で面白いと思ったりするだろ? それだよ』と言ったら、『仕事って面白いものなんですか?』って真顔で返されちゃって。なんかこっちも、ムキになっちゃって、『チャレンジしたいこととかあるだろう?』って聞いたら、『普通に暮らせればいいです』って、あっさり言われちゃいました。
 若い社員の働く意識が、私たちの頃と変わってきたと思ってましたが、仕事そのものに興味がないってことですよね。

最近、ワクワクしてますか

 会社としてはね、長時間労働をしないよう徹底的に管理して、有給休暇も取れるようにしたし、キャリアパスも示さないとダメだってことでね。色々とやってきたんですけど……。
 なんだかコミュニケーションを成立させるのが、難しい世の中になっちゃいましたね」

 こう嘆いていたのである。

 ワクワクする――。

 最近、私も使ってないですね、この言葉(笑)。というか、死語に近い?気もしなくもないけど。
 だが、一方で、1年におそらく2回か3回くらいは、「ワクワクする仕事を経験」したからこそ、今までがんばって来られたように思う。そもそも「3年働いたらさっさと辞めて、結婚して、30歳前には子供を産む」予定だったノーテンキな小娘が、「仕事って面白い! もっと自分の能力を発揮したい!」などと勘違いし、半世紀以上生きた「今」も必死に働いているわけで。自分の能力の限界に毎度毎度打ちのめされながらも、なんやかんや言っても「仕事はおもろい」……と思う。

 しかしながら、件の部長さんが「若い社員の働く意識の変化」という最近やたらとあちこちで聞く言葉を使い、「コミュニケーションを成立させるのが難しい」とコミュニケーションのせいにしたことに、少々違和感を持った。いや、正直に申し上げれば、この数年間、抱き続けている不信感といってもいい。なにせ、こういう論理展開、すなわちあたかも「若者」に原因があるような話の展開にする大人たちが多すぎる。

 つい先日も、「権利意識が強い社員」「部下の常識力の高め方」「若手社員とのコミュニケーションに不安」という文言を盛り込んだ、パワハラ防止セミナーの告知が大炎上する“事件”があったばかりだ。この件についてはこちらのコラムに書いたのでここでは書かない(資料)。

 ワクワクの意味が分からないのも、仕事が面白くないのも、「若い社員の意識の変化」ではなく、そういう意識を生み出している大人の問題ではないのか?
 そもそもおじさん・おばさんたちは、ワクワクしているのだろうか?

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