(写真:Shutterstock)
(写真:Shutterstock)

 今回は「分厚い中間層」についてあれこれ考えてみる。

 ご承知の通り、岸田文雄首相は「新時代共創内閣」との看板を掲げ、「令和版所得倍増」をうたい、「分厚い中間層」をつくると豪語している。

 しかし、その「中間層」とはいったいどこの、誰を指し、「所得倍増」とはどこの、誰の所得を倍増するのか? という点については、一切言及していない。

日本の未来は暗い?

 確かに、首相就任の記者会見では、「子育て世帯の教育費・住居費の支援強化」「看護師や介護士、保育士らの所得引き上げ」「大企業が強い立場を利用して納入業者に負担を強いる下請けいじめの監視強化」などを想定しているとし、徹底的に格差是正に取り組むとした。

 しかし、まさか「看護師や介護士、保育士=中間層」ってわけじゃないですよね?
 まさか「下請けいじめの監視強化=所得倍増」ってわけでもない、はずである。

 「看護師と介護士の両者の所得拡大額を合算すると1兆1400億円の経済効果が見込める計算になる」との見解も報じられているけど、それは医療費を上げるってことだろうか?
 分厚い中間層を目指せば、貧困問題もはたして解決されるのか?(参考コラム「お肉!」と喜ぶ母子と非正規21万人減 見えない貧困急増

 私の頭が悪いだけなのか、理解力が乏しいだけなのか、あるいは両方なのか。何度テレビを見ても、何度新聞を読んでも、岸田首相の言う「中間層」が全く分からない。

 脳内ではおサルが、「つーかさ、年収の中央値=370万円が倍増する! ってことなら、すごくね? 最低でも600万円だぜ!」とノーテンキに喜び、「バーカ、そんなの無理! 今の日本企業にそんな力ないっつーの!」とタヌキが戒め、「新中間階級を分厚くするんでしょ? 年収500万円もらえるってことだよね~!」とウサギが浮かれ、「どこにそんな金、あんだよ! 岸田ノート見せろ!」とトラがほえまくっている。

 岸田首相の方針には多いに共感するし、そうなってほしいという思いはある。この国に暮らす1億2521万人の「希望」になればいいと、心から願っている。

 だが、「中間層」という至極曖昧な言葉を多用することは、本来解決すべき問題が置き去りにされ、結果的に「見捨てられる人」を量産することにつながる。岸田首相が危機感を示しているように、新型コロナで一気に社会構造のひずみを示す時計の針が進んでしまったので、今、長期目線で取り組まない限り日本の未来は暗い……、いや、ない。

続きを読む 2/5 低所得層へ転落も

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1577文字 / 全文5176文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。