炊き出しの列にごくごく普通の服装をしている人が並び、普通に生活できていた人が、「ああ、自分は低い立場の人間だったのか」とショックを受けている。生活費をバイトで賄っていた学生は収入が途絶え、「こうやってしょうゆ漬けにすると、長持ちするので」と生えていた野草を食材にしている(資料)。

 コロナ以前は、私たちと同じ日常の中にいた“隣人”たちの生活が激変しているのだ。

上級と下級では勝負にならない

 厚生労働省によれば、新型コロナウイルス感染症に起因する解雇等見込み労働者数は、21年7月9日時点で11万人を超え、11万326人。うち非正規雇用者は5万1167人。非正規だけでなく正規雇用(正社員)の人たちもコロナ失業している。また、日経新聞によれば(9月26日朝刊1面)、2020年度で約21万人の非正規雇用者、1万人強の正規雇用者が、上場企業から“消えている”とのことなので、実際には公表される数以上の人たちが仕事を失っていると考えられる。

 そして、今後はさらに仕事を失う人が量産される可能性が極めて高い。

 労働政策研究所の調査によると、21年5月の企業の売上額を「コロナ前」の2019年5月と比べた場合、52.1%の企業が「減少した」と答えたのに対し、約2割に当たる18.3%の企業が「上回っている」と回答。また、21年5月時点の売上額の水準が今後も継続する場合、「現状の雇用を維持できる期間」については、18.8%の企業が「1カ月~半年以内」、12.9%の企業が「1年以内」と回答。3分の1弱(31.7%)の企業で1年以内が雇用維持のリミットと考えていることが分かった。

 一方、4割の企業が「雇用削減の必要はない」とした。ただし、既に雇用削減をした企業もあるので、正確には「これ以上の削減の必要はない」と解釈できるであろう(資料)。

 つまり、22年のゴールデンウイークまでに「コロナ前」の状態に戻れないと、大量の人員削減が行われる可能性が極めて高い。個人的にリサーチした結果でも、飲食業や宿泊業、小売店の経営者の中には「借金が増えるだけ。これ以上、モチベーションが持たない」と嘆く人が多かった。

 「勝ち組負け組って言っていた時代は、まだよかった。今は上級と下級で勝負にならない」
 「ぜいたくもせず、真面目に生きていたんですけど、世間からは努力が足りないっていわれるのかね」
 ……ギリギリの生活でなんとか耐えている人たちからは、冒頭の運転手さんたち同様、あきらめ感が漂い、
 「コロナで家庭訪問もできなくなってしまいました。私が勤めている学区は、あまり経済的に豊かじゃない地域なので……」
 と子どもの生活を心配する小学校の先生もいた。

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