
この数日間、テレビを見るたびに「奇妙な感覚」に陥っている。
新型コロナウイルスの感染拡大で危機に陥っている医療現場がテレビ画面に映し出され、自宅療養中に亡くなった人たちの状況が報じられ、「感染者は減少傾向にあるが、この後、再び拡大に転じる可能性がある」と専門家たちが口をそろえている。異物が混入したワクチンを打った人が亡くなったと速報が入り、MC(番組司会者)が、「ステンレス片が混入したとしても、溶け出すなどの恐れは少ない」という厚生労働省の見解を読み上げる。
どこか遠かった出馬会見
その直後には、自由民主党総裁選の候補者たち(検討中も含む)が、「ご支援よろしく!」とばかりに、議員事務所などを一つひとつ回り、「安倍晋三前首相と会談」「二階俊博氏を訪問」「麻生太郎氏と会談」などのナレーションが流れ、「どんなお話をなさったんですか?!」と記者たちが候補者に駆け寄っている。スタジオでは派閥の名前と所属議員の数が書かれたフリップを片手に、政治記者たちが「票読み」を行っている。
総裁選の日程は決まっているものなので、仕方がないのかもしれない。しかし、どっちの世界に自分がいるのか分からなくなってしまうのだ。というか、“政治家さん”たちが遠い。すごーく遠い。
総裁選に出馬した人たちの政策発表の会見は、岸田文雄氏も高市早苗氏も、とても分かりやすいものだった。自分の言葉で話そうとしていたし、記者からの質問にもできる限り誠実に答えようとしている姿勢が伝わってきた。
なのに、どこか遠い。
自宅療養中の死、異物が混入したワクチン、コロナ失業、生活苦が続く非正規雇用者、誰に相談することもできず「死」を選ぶ子供……。政治家が庶民の「心に寄り添う」ってそんなに難しいことなのだろうか? 難しいことは分かる。金の問題につながるからだ。
しかし、「ああ、この政治家さんはこっちの世界のことに、一人の人間として寄り添おうとしてくれているのだな」と感じさせてくれれば、それだけで少しは救われる。がんなどの病気で事前に余命宣告がされていた場合でさえ、大切な人を失った家族は、亡くなった人の「死のワケ」に悩むのだからして。
だいたい「ご支援よろしく!」って、電話で済ませちゃダメなのか? 一体いつまで、いやいつから、“あのお方たち”は絶対的存在になったのか? などと、総裁選のあり方にまででケチをつけたくなってしまうのだな。これが。
というわけで、今回は皆さんの多くにとっては、きっと興味がないだろうテーマを取り上げる。おそらくページビューという“票”にはつながらない。
前回は、読者の皆さんにビシッとはまる内容だ!と思いながら書いたが、おそらく今回のテーマに関しては、「もう、どーでもいいよ。だってほら、高市さんとか野田聖子さんとか総裁選候補に女性が2人も名乗りを上げてるし」「そうそう。東京五輪・パラリンピックの関係者も、なんやかんやいって、会長、大臣、都知事と女性がズラリだったし」「デジタル庁の事務方トップ(デジタル監)も女性だし」などと、解決済みと思っている人が多いのではないか。
はい、そうです。今回のテーマは「女性活躍どうなった?」です。
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