(写真:Shutterstock)
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 もうかれこれ15年ほど前になるだろうか。
 インタビューをする度に、「コーチばかりがベンチに陣取ってる感じ」だの、「口だけ番長だらけで、いやになる」だの、「社員全員の会議の後、管理職会議があるのだけど、ほぼ同じメンバーで、笑うに笑えない」だのという話を聞かされてきた。「いつまで私はペーペー扱いされるんだ」と、会社の高齢化を嘆く30代が山ほどいたのだ。

 やがて、その高齢化対策の一環として、役職定年制度が一般化し、希望退職という名のリストラが横行し、“口だけ番長”たちは“群衆の中で息を潜める働かないおじさん”になった。その一方で、「なんか違う」と辞めてしまう若者に手をこまねいていたら、社内の平均年齢だけがどんどん上がり、「シニア社員をなんとかしないと、会社が存続できない!」と危機感を抱く企業が少しずつ増えた。

現場を任せられるのは誰?

 本音では(シニア社員には)「できればお引き取り願いたい」。が、従業員に70歳までの就業機会を確保する努力義務が課せられたこともあり、「どうにかしなきゃ!」とシニア社員のモチベーションアップを画策している。もっとも、そういった企業はごく一部だ。それでも、こういった動きはちょっとだけうれしかったりもする。「目の前のベテラン社員を生かせない企業に未来はない」だの「人の可能性を信じろ!」だのと言い続けてきているので、やはりうれしい。

 そんな中、「定年延長は……失敗だった」と嘆く、某企業の役員から相談を受けた。

 ベテラン社員への期待が裏切られた、と言う。

 「そりゃ、定年延長したからって、『はいはい、頑張りまーす!』っとモチベーション上げるわけないじゃん」
 「そうだよ、定年延長より金。金上げてくれ~」

 といった声も聞こえてきそうだが、男性が話してくれた内容は、「働かないおじさん&おばさん問題」とはちょっとばかり異なる。どちらかといえば、日本企業の病巣そのものに近い。

 というわけで、今回はこの問題を取り上げようと思うのだが、テーマは……、さて、なんだろう。シニア問題というより会社の問題なので、「会社の身勝手」といった感じだろうか。まずは先の男性のお悩みからお聞きいただこう。

 「もともと地味な業界ですし、社員の高齢化はかなり深刻でした。若手採用や中途採用にも力を入れてきたので、以前に比べると、エントリーしてくれる若手も増えてきたんです。でもね、やっぱり現場を安心して任せられるのは長年やってきたベテラン社員です。

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