(写真:Shutterstock)
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 先日、久しぶりに東京・大手町から東京駅まで地下道を歩いた。……が、“何か”が違う。

 エスカレーターを駆け上がるビジネスパーソンもいなけりゃ、「おい! 速く歩け!」と言わんばかりに後ろからプレッシャーをかける人もいない。かっちりしたスーツを着ているのに「目だけ死んでる人」もいなけりゃ、眉間にしわを寄せて険しい顔で歩いている人も皆無だ。電車に不慣れな私が、「えっと、こっちでいいんだよなぁ」と急に立ち止まっても、迷惑そうな顔をする人もいないし、下を向いて歩いていて私の大きなショルダーバッグにぶつかる人もいない。

大手町の人流が変化

 なんとも奇妙な感覚に襲われたので(もちろんいい意味で)、すれ違う人たちを改めて観察したところ……、みんななんだか、とっても元気そうだった! 常々、「大手町、怖い」と感じていたので、「爽やかな空気」にかなり驚いてしまったのである。

 いったい、ビジネスパーソンに何があったのか? あれこれ考えた結果、ある仮説にたどり着いた。

  • リモートワークで“痛勤地獄”から解放
  • 在宅勤務で、めんどくさいコミュニケーションから解放
  • 遅くまで飲み歩くこともできなくなり、睡眠時間が増えた

 といったコロナ禍で強制的に行われた「働き方改革」により、肉体的にも精神的にも健康になり、大手町の“人流の空気”が変わったのだ(人流……、はやりの言葉を入れてみた!)。

 実際、6月23日に厚生労働省が公表した「令和2年(2020年)度『過労死等の労災補償状況』」によると、脳・心臓の病気による労災の申請数は784人で、19年度の936人から大きく減少した。国内外を含め多くの研究で長時間労働および深夜勤務と、脳血管疾患もしくは心臓疾患とは強く関連していることが認められているので、労災申請数の減少は、コロナ禍で長時間労働が減ったことが一因と考えて問題ない。

 しかし、その一方で、急増しているのが「うつ病などの精神障害」だ。

 仕事の強いストレスなどが原因でうつ病などになった事案で、労災と認められたのは608人と、前年度より99人増え、1983年度の統計開始以降、2年連続で最多を更新した。このうち「過労自殺」に追い込まれたのは未遂も含めて81人。

 認定の理由は「上司などからのパワハラ」が99人と最も多く、「悲惨な事故や災害の体験」が83人、「職場でのいじめや嫌がらせ」が71人、「仕事量や内容の大きな変化」が58人だった。

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