健康社会学者の河合薫氏と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」の第3回をお届けします。記事の最後のページでは対談動画をご覧いただけます(編集部)。

※本記事は、対談の模様を編集してまとめたものです。

健康社会学者の河合薫氏(左)と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏
健康社会学者の河合薫氏(左)と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏

河合薫氏:環境によって、性が入れ替わる生物がいるというのは、本当なんですか?

黒岩麻里氏:はい。性を途中で変える生物。性転換と呼ぶんですけれども、一番よく知られているのは魚類です。相手と自分の体の大きさを比べて、自分のほうが体が大きいとメスになる生き物がいます。

河合:体が大きいとメス、ですか。なんか逆のような……。

体が小さいうちはオスでもメスでもない

黒岩:はい。メスです。カクレクマノミという、アニメ映画の主人公になった魚をご存じですか?

河合:ディズニーの『ファインディング・ニモ』ですね? とてもきれいな魚ですよね。

黒岩:カクレクマノミは集団で暮らすのですが、1番体が大きい個体がメスなんです。2番目に大きいのがオスで、それ以外は一応オスなんですけど、体が成熟しないので、オスでもメスでもないというか、繁殖に参加していません。

河合:へえ。繁殖に参加しないで何をしているんですか。ちょっとお魚さんには失礼な質問ですが。

黒岩:一緒にいることが仕事です。共同生活をしているんです。

河合:そっか! 共同生活をすることによって、天敵から身を守る。繁殖のサポートをする役割ってことでしょうか。

黒岩:そういうことです。体が小さいうちに卵を産んじゃうとちょっとしか生めないので、体が大きくなってから産んだほうが効率的です。なので、小さいうちはみんなで暮らして天敵から身を守ります。それで餌をたくさん食べて大きくなってからが勝負です。

 そして例えば、1番大きいメスが死んじゃったら、2番目だったオスがメスに昇格というか、性転換します。すると3番目に大きく育っている魚がオスになるという具合です。

河合:性をコロコロ変えるって、羨ましいというか不思議ですね。

黒岩:それがきっと合っているんでしょうね、クマノミには。


黒岩麻里(くろいわ・あさと)氏
北海道大学大学院理学研究院教授
1973年、京都市生まれ。2002年名古屋大学大学院生命農学研究科にて博士号を取得後、日本学術振興会特別研究員を経て、2003年北海道大学先端科学技術共同研究センター講師に着任。2008年に准教授に昇任、2016年より現職。専門は生殖発生学。2011年染色体学会賞、2013年文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞。著書に『消えゆくY染色体と男たちの運命』、『男の弱まり』など。

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