だからスポーツはスポーツとして好きでいいし、一生やっていってもいい。それ以外に、なりわいとするものを考える。自分は何に興味があるのか、何だったらやれるのか、というようなことを考えておく必要はあります。

 アスリートたちは、皆さんが思っているほど、朝から晩までトレーニングしているわけじゃないんです。非常に高度な、レベルの高いトレーニングをぎゅっと凝縮して何回かに分けてやっているので、他のことをやる時間もあるんです。

 その時間をどう過ごし、引退後の人生をどういうふうに見据えていくかが、やめた後に差となって出てくると思います。

柔道のプロ化、可能性は?

河合:高校も大学も剣道場の隣が柔道場で、剣道はキャーキャー声出して、臭くて(笑)。

 柔道の方はしーんとしていて、息遣いしか聞こえなくて。でも、柔道も剣道も1日2時間ぐらいしか練習していませんでした。朝練とかあっても、非常にコンパクトですものね。

山口:そうです。だから時間がないというのは言い訳です(笑)。遠征などが多いのも事実ですが、パソコンを持っていけば、今は本だってデジタルで読めますしね。でも、私も当時を振り返ると、時間は無限大というか、自分は年を取らないと信じていたんですよね。

河合:分かります、はい(笑)。

山口:若い選手たちには、あっという間に40歳、50歳になるよ、後で悔やんでも遅いから、若いときに無理してでもいろいろなチャレンジをしておいた方がいいよというのは言っています。

河合:なるほど。私は柔道などのプロ化というのも、1つの選択肢じゃないかなと思うんですね。プロ化して、その後指導者へというキャリアパスができると、今とはまた違う形で柔道の強さみたいなのが出てくるのかな、とか。

山口:柔道で難しいのは、例えばテニスとかなら、上手い人同士の試合ほど長時間でも楽しんで見ることができますよね。

河合:応援する人たちが、ってことですね。

山口:はい。お互い競い合って、何回同じ相手と試合をしても、見ていて面白いですよね。(ノバク・)ジョコビッチ選手や錦織圭君、(ラファエル・)ナダル選手などは、同じ相手との対戦でも、試合ごとに違う展開が見込める。でも柔道って、一番面白いのは、短い試合なんです。

河合:確かに! 瞬殺で背負い投げとかしてくれると、盛り上がります!

山口:長い時間見せることが難しい柔道で、プロ化してお金を取れるのかというのは、ちょっと心配なところです(笑)。しかも、同じ相手とやればやるほど、つまらない試合になるんです。

河合:そうですね。テレビ局が柔道の試合の放映権に、どれだけ払ってくれるか。ちょっと難しいというか(笑)。では、最後に、開催まで本当に少しになりましたので、山口さん自身の東京五輪への思いを、今一度お聞かせいただけますか?

<span class="fontBold">河合薫氏<br /> 健康社会学者(Ph.D. 保健学)、気象予報士</span><br />1988年千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人を超える。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。
河合薫氏
健康社会学者(Ph.D. 保健学)、気象予報士

1988年千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人を超える。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。

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