河合:今もあまり変わってないですね、日本は。数年前、スポーツ界でパワハラなどの問題がいろいろ出てきましたけれども、あれも日本社会の縮図ですね。パワハラやセクハラへの対応も、世界の流れに遅れてるし。日本って、外圧があって初めて動くというか、変わるといいますか。

フランスの柔道はスイミングクラブ

山口:そういうことですね。特にスポーツって、自分と同じ考え方の人が集まって、好きなスポーツをやる。その集団がスポーツ村といわれるわけですね。決して意図的に、意見の違う人を締め出しているわけではない。でも、ディスカッションすることに慣れていない側面は多分にある。

 結局、外の人から議論を仕掛けられると、何となく萎縮してしまって、議論するより認めちゃえみたいな(笑)。国内の力で壁を突破するというよりも、外の声で牙城を崩されて、変えられてきてしまったケースが結構多いと思いますね。

河合:フランスと日本の女子柔道にも、大きな違いがありますか。

山口:女子柔道に限らず、フランスと日本の柔道は全く違うんです。フランスの柔道って、日本でいうとスイミングクラブのイメージなんです。

河合:スイミングクラブ? というのは。

山口:スイミングクラブって、例えば、(元競泳選手の)北島康介さんのようになることを目的として入る子供より、ただ、泳げるようになりたいから、スポーツをやりたいからと入っている子供が多いですよね。なので、ある程度のレベルになったらやめていく。フランスの柔道はまさにそうなんです。

河合:へえ~。というか、柔道に何を求めてるんでしょう?

山口:例えば、ちゃんとあいさつできるかとか、お友達に優しくできるかとか、先生の話をちゃんと聞けるかとか。いわゆる礼儀とでもいうのでしょうか。親がしつけをするより、教室に通わせれば人間としてのしつけをちゃんとしてくれるよというのが、フランスの柔道クラブなんです。ですから、柔道人口にも大きな違いがあるんです。日本の競技人口、登録者は今、12万~13万人。フランスは60万人です。

河合:うわぁ~、そんなにいるんですか。

山口:その60万人の約8割が14歳以下といわれています。嘉納治五郎が目指した人づくりだったり、人間の土台となる部分をつくったりする柔道に、フランスはすごく力を入れている。男の子でも女の子でも、子供のうちは柔道をやらせるといいよ、という文化が定着しているんです。

河合:層が厚くなりますね。

山口:私が世界選手権に初めて出たときも、フランス人は本当に強かったです。試合でにらまれると、あ、もうだめだと思っちゃうような、王者の風格がフランスの選手にはありました。

<span class="fontBold">山口香氏<br /> 筑波大学体育系教授、日本オリンピック委員会(JOC)理事</span><br />1989年筑波大学大学院体育学修士課程修了。1978年第1回全日本女子体重別選手権大会で最年少優勝(13歳)。以後10連覇。世界選手権で4個の銀メダル。84年第3回大会で日本女子初の金メダル。88年ソウル五輪で銅メダル。翌年引退。シドニー五輪、アテネ五輪で日本柔道チームコーチ。日本バレーボール協会理事、日本サッカー協会理事、コナミホールディングス社外取締役、日本BS放送社外取締役。筑波大学で教鞭(きょうべん)をとる傍ら、JOC理事などとしてスポーツ全般の普及発展に努める。
山口香氏
筑波大学体育系教授、日本オリンピック委員会(JOC)理事

1989年筑波大学大学院体育学修士課程修了。1978年第1回全日本女子体重別選手権大会で最年少優勝(13歳)。以後10連覇。世界選手権で4個の銀メダル。84年第3回大会で日本女子初の金メダル。88年ソウル五輪で銅メダル。翌年引退。シドニー五輪、アテネ五輪で日本柔道チームコーチ。日本バレーボール協会理事、日本サッカー協会理事、コナミホールディングス社外取締役、日本BS放送社外取締役。筑波大学で教鞭(きょうべん)をとる傍ら、JOC理事などとしてスポーツ全般の普及発展に努める。

次ページ スポーツをなりわいにできるのは一握り