健康社会学者の河合薫氏と、日本オリンピック委員会(JOC)理事でもある山口香筑波大学教授が「東京五輪は開催されるか? 勝利至上主義と“おじさんの森”」と題して実施したライブ対談の模様を3回に分けて掲載します。最終ページでは、対談動画をご覧いただけます(編集部)。
※本記事は、対談の模様を編集してまとめたものです。

河合薫氏:私、実は山口さんが全日本女子柔道で10連覇をして、世界でも大活躍されていたのと同じ時代に、大学の剣道部だったんです。インカレ(インターカレッジ)でベスト16に行くくらい、結構頑張っておりまして。香と薫で名前も似ているので、勝手にシンパシーを感じておりました。なので、今日はお会いできて本当にうれしいです。よろしくお願いします。
山口香氏:(笑)こちらこそよろしくお願いいたします。
河合:早速ですが、山口さんは日本オリンピック委員会、JOCの理事でいらっしゃいますね。一方で、いろいろと物議を醸した森(喜朗)さんがいらっしゃったのは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会です。この組織委員会とJOCのそれぞれの役割というか関係性がよく分からないのですが、どうなっているんでしょうか。
山口:オリンピックが東京で開催されると決まった(2013年の)あの場面を、皆様も記憶していらっしゃるかと思うのですが、実はあの後に、開催都市契約というものを結びます。IOC(国際オリンピック委員会)と東京都、そしてJOC、この3者で締結するのです。
スポーツの現場を担うJOC
ただ、実際に大会の開催準備をする、そして運営していくには、実行部隊が必要です。その実行部隊が組織委員会ということになります。
ですから、この大会を責任持って運営するのが組織委員会の役割です。ただそこにはJOCも当然関わっていますし、東京都からも多くの職員が出向しています。
河合:あくまでも組織委員会に運営の責任があり、その下というか先にJOCと東京都があるというイメージでしょうか。
山口:そうですね。JOCの役割はいろいろあるのですが、例えばジョイントマーケティングといって、さまざまなスポンサーを集める、というものがあります。さらに、多くの競技団体とのオリンピック開催に向けての調整があります。さまざまな競技の選手団を強化してまとめていくとか、いわゆるスポーツの現場のところをJOCが担っているのです。
河合:なるほど。森発言があった後に、山口さんのさまざまな発言がメディアでも注目されました。その中で、(組織のメンバーは)男女同数にしたほうがいいというようなことをおっしゃっていたのを拝見したのですが、組織委員会とJOC、どちらもやはり女性のほうが圧倒的に少ないわけですよね。
山口:JOCの理事数でいいますと、今は(女性が)20%強ぐらいです。ただし、その少なさの原因は、決して男女差別というわけではないんです。スポーツというのは男性から始まっていますので、競技人口を見ると、女性のほうが多い競技もありますが、多くは男性のほうが競技人口が多い。ですからどうしても、役員も男性が圧倒的に多かった。そこからスタートしています。
女子柔道なんかも歴史はすごく浅いので、やっと役員になるような人が育ってきたという感じです。ですので、女性を役員に抜てきするのに、時間がかかっているわけですね。

筑波大学体育系教授、日本オリンピック委員会(JOC)理事
1989年筑波大学大学院体育学修士課程修了。1978年第1回全日本女子体重別選手権大会で最年少優勝(13歳)。以後10連覇。世界選手権で4個の銀メダル。84年第3回大会で日本女子初の金メダル。88年ソウル五輪で銅メダル。翌年引退。シドニー五輪、アテネ五輪で日本柔道チームコーチ。日本バレーボール協会理事、日本サッカー協会理事、コナミホールディングス社外取締役、日本BS放送社外取締役。筑波大学で教鞭(きょうべん)をとる傍ら、JOC理事などとしてスポーツ全般の普及発展に努める。
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