今年、医療従事者へのワクチン接種がスタートした当初、報道番組の多くは積極的に副反応情報を流していたと記憶している。
 NHKの夜のニュースを見ていたときに、「速報」でワクチン接種後にくも膜下出血で亡くなった人の情報が伝えられ、その報道姿勢に誠実さを感じた。民放の報道番組では英国在住の日本人看護師の、ワクチン接種後の様子を短いドキュメントで流し、悪寒や頭痛という副反応の苦しさが映像で見えて、実に役に立った。

ワクチン1日、100万回!

 菅義偉首相も、1月25日の衆院予算委員会で、「副反応や効果を含めてワクチンに対する正しい理解を広げるべく、科学的知見に基づいた正確でわかりやすい情報発信をしていきたい」と発言(資料)。
 河野太郎行政改革担当相も、「高齢者がよく見るテレビや新聞に効果や副反応などの正確な情報を届けられるよう最大限努力する」「テレビCMも検討している」としていたので、メディアが副反応を丁寧に取り上げるのも、こういった首相や大臣の発言が背景にあるのだなぁ、と。それはそれでとても誠実だし、いいことだ!と素直に思った(資料)。

 ところが、菅首相が5月7日の会見で、「ワクチンを打てば日常が戻る、ワクチン接種を急ぐ」と「ワクチン1日100万回計画」をぶち上げてからというもの、テレビの副反応報道熱は急速に低下したように思えてならない。いや、確実に副反応の報道は減った。

 「副反応、気になりませんか?」
 「突然、なんだよ」
 「いや、突然っていうか、前、結構ちゃんとやってたじゃないっすか」
 「ん? くも膜下とか? アナフィラキシーとか?」
 「ええ……。つーか、厚生労働省の資料見たら、結構、いろんな副反応があるんですよね。亡くなってる人もいるし」
 「どれどれ」(←資料を見る)
 「うーん、でも、これ、死因とワクチンとは関係ないって全員なってるじゃねーか。副反応の確率はインフルエンザよりも低いんだよ。すげー低い確率だし、今はとにかくワクチン接種だよ! 国も大規模会場設置したし……」
 「そうだよ! 副反応とか、余計な恐怖をあおるだけだ。今はワクチン進めてんだよ!」(←横から割り込んできた人)
 「報道でやんなくていいだろ。ワイドショーで、コメンテーター色々出してやりゃいいじゃねえか。報道番組はさ、“上”が、ほら、なぁ」(←また別の、横から割り込んで来た人)
 「1日100万回計画だ! 打て打て、ワクチンは希望だぞ!」
 「……そっすね。そうですよね、確率超低いですもんね。だったら、コロナ感染した人探して、インタビューしますか?」
 「おお! できれば顔出しが、いいな! コロナ怖いぞ、ワクチン打とう! そっちそっち。ワクチンワクチン」
 「はい! ワクチン100万回っすね!」
 「そうそう! 希望のワクチン、希望の五輪、ワクチン1日100万回!」

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