私には原田さんのお父さんの状況はひとごととは思えなかったし、何より、副反応に関する詳細な情報を公開してくださったことにとても感謝した。それまで「確率」でしか見ていなかった副反応が、「私ごと」になった。「心配すべき副反応=アナフィラキシー」「副反応=数日で治る」という認識も一気にひっくり返った。そして、改めて「今、ワクチンを打っているのは高齢者なんだ」という事実に気付かされた。

反応が鈍いメディア

 ワクチン接種では、同じ「高齢者枠」とひとくくりにされていても、65歳~70代前半と70代後半以上とでは、身体機能も認知機能も全く違う。
 80歳前後になれば多かれ少なかれ内臓にガタがきて、薬を飲んでいたり、定期的に診療を受けたりしている人が多い。一方で、痛みを自覚しにくくなったり、日常的にどこかが痛かったりするので、痛みそのものを訴えなくなる傾向もある。

 また、原田さんのお父さんは当初、救急車を呼ぼうとしたお母さんを全力で止めたというが、これも高齢者にありがちなこと。私ごとになってしまうが、6年前に亡くなった父がそうだった。

 すい臓がんで自宅療養していた父が、突然、唸(うな)り声をあげ、顔面蒼白(そうはく)になったので、母が救急車を呼ぼうとしたら、父は「大丈夫だ!」と言い張った。私は、母から電話をもらった際に、「とにかく(救急車を)呼んで!」と伝え、家に駆けつけたが、すでに父が救急車を追い返した後だった。結局、翌日の明け方に救急搬送されて一命をとりとめたが、大量の輸血をすることになり、父はあっという間に精神的にも肉体的にも衰弱した。がんそのものによる“変化”ではない。内臓内でステントが落下し、そのための処置と入院で“変化”してしまったのだ。

 とにもかくにも、高齢者には高齢者なりのさまざまな事情がある。ましてや、副反応が出てたときに、サポートする息子や娘がいない高齢者も多い。

 日本は超高齢社会だ。そう。日本は世界一の高齢社会なのだ。

 なのに、原田さんが公開した情報に対するメディアの反応は鈍かった。

 原田さんが出演していた一部のワイドショーや情報番組などでは取り上げていたけれど、伝え方は決して満足できるものではなかった。

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