そして、この時間もコロナ関連の仕事に関わっているすべての“現場”の人たちが、主体的に動き、考え、価値を生み出し続けているから、なんとかかんとかワクチン接種会場が回っている。しかし、どんなに盤石な現場力があろうとも、現場ではどうにもできない事態も相次いでいる。

 医師、看護師、保健師、介護士、医療現場に関わるすべてのスタッフたちの「現場力」は、彼らの自己犠牲で成立している。今にも消えそうな「現場の力の炎」を、現場の人たちが命を削りながら守ってくれているのである。

現場一流、経営三流

 本当に申し訳ないというか、なんというか。首長よ! 首相よ! 頼むぜ! という言葉しか出ない。

 新しい製品・サービスや、高品質・高機能といった独自の付加価値を生む「現場力」はかつて、製造業を筆頭に、すべての産業で日本経済発展の原動力だった。

 「現場一流、経営三流」──。
 こんな言葉が使われるようになったのは1990年代後半のこと。製造業を研究フィールドにする経済学者や経営学者たちが、ひそかに、そして好んで使い始めた言葉だ。
 そこにあったのは、「経営者たちよ、生命線である現場の力を生かす、戦略的な経営をしてくれ!」という願いであり、悲鳴だった。

 1990年以降、人減らしに明け暮れた経営者たちは、熟練の社員を切り、非正規社員を増やし、外注化を進め、現場を見ない経営をした。現場の力を生かすには、経営者と現場の距離感が大切なのに、現場に行かない経営者が増え、現場との距離は広がり続けた。

 2011年、日本労働研究雑誌に寄稿された、「日本の技術者──技術者を取り巻く環境にどの様な変化が起こり、その中で彼らはどの様に変わったのか」というタイトルの論文(同志社大学教授中田喜文氏ら)には、1980年代から2000年代初頭までの現場の変化が詳細に分析されている(以下、抜粋)。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1642文字 / 全文5450文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。