その後も、それぞれの場所で、それぞれのスタッフによる「痒(かゆ)いところに手が届く」対応が完璧で、
 ――本人確認(待ち時間ゼロ、確認30秒)→問診票の確認(待ち時間ゼロ、30秒)→医師の問診(待ち時間ゼロ、30秒)→接種(待ち時間ゼロ、10秒)→副作用観察の待機(15分間)――
 という、一連の流れがあっという間に終わってしまったのだ。

 しかも、「副作用観察の待機時間15分」の間に、区側のスタッフが来て、母に副作用の説明をしてくれたのだが、話し方が高齢者にもとても分かりやすく、自然な感じで、かつ丁寧だった。

高齢者に寄り添う対応、随所に

 母がきちんと理解したことを確認すると、私に15分待機の終了時刻が書かれた付箋メモと、2回目の接種日時などが書いてある紙を渡し、当日の都合などを確認。
 再度、母に「夜になってからとか、明日とか、明後日とかでも、なにか具合悪い~となったら、我慢しないでくださいね。熱が出たときは市販のお薬を使って大丈夫ですからね。心配なときは、お医者さんに診てもらってくださいね」と、念を押してくれた。

 周りを見渡してみると、一人で来ていたおじいちゃんには、2回目の予約日時を書いた紙をカバンに入れるのを手伝ったり、おばあちゃんがまごついていたら、さっと駆け寄って「ゆっくりで大丈夫よ」と声をかけたり。寒そうにしているおばあちゃんには、「これ着ちゃいましょうか?」と脱いでいたカーディガンを着せてあげたり。

 スタッフ同士がお互いの動きを確認しながら、流れ作業でよどみなく動き、高齢者に声をかけ、目配り、気配り、機転の利かせ具合など、すべてが素晴らしかった。

 とかく高齢者は、新しいこと、新しい場所を不安がる。普段できていることができなくなったり、初めて会った人の言っていることも聞き取りづらくなったりする。こういった高齢者に、きちんと寄り添うスタッフの対応には、深く心を動かされた。

 つくづく現場の力の大切さを感じた。

 これまでも、取材や講演会で訪れた全国津々浦々の“現場”で、「現場の力」に何度も感動し、「日本というのは、現場で愚直に働く人たちに支えられているんだなぁ」と何度も痛感してきたけど、その現場の力が「ワクチン接種会場」というごく限られた空間にも存在したのだ。

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