
「人」を全く見ない人たちによる、「ひとつよろしく!」政策で、「現場の人たち」が限界に追い込まれる事態が続いている。
「とにかくもう、本当に人手が足りないんです。ずっと、本当にずっと働き続けている。気が休まる暇もない状態が1年以上続いています。
こんなのでいい介護ができるわけがありません。つい大きな声を上げてしまったり、(介護施設利用者の)手をたたいてしまったり。自分が嫌になることばかりです。私がやりたい介護ができない。それどころか、ベッドに寝かしつけた後、『このまま起きてこないでいてほしい』などと思ってしまう。もう、私、おかしい。自分が怖いです。
今まで10年以上、この仕事に関わってきました。介護という仕事にプライドがありました。賃金や待遇はあまりいいものではありませんが、認知機能が低下し、足腰が弱っていく高齢者の方でも、介護の善しあしで、状態が改善するんです。それがやりがいでしたし、私の介護士としての信念を支えていました。
なのに……、今は、もう何をどうすればいいのか分からない。時折感情がなくなっている自分がいて、このままでは壊れてしまいそうで……本当に怖い」
疲弊し続ける介護の現場
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した1年前から、介護現場の窮状を繰り返し書いてきた。
メディアでも当初は、介護施設で新型コロナのクラスターが発生など、介護職の人たちの“苦労”にスポットを当てた報道が多かったが、最近はめっきり減った。あたかも「状況は改善している」かのように……。
が、実際にはそんな気配はみじんもない。
入所者や利用者、つまり、「おじいちゃん、おばあちゃんの元気」が急激に減退していて、数年後にはあちこちで、悪い予感をはるかに超える“超高齢社会の悪夢”が頻発しそうなほど、現場の限界境界線は揺らいでいる。
冒頭のコメントは、私がいつも介護現場の状況を取材させていただいている、数人の知人のうちのひとりによるものだ。
彼女は「介護の現場がますます疲弊している状況を発信してほしい」とメールをくれた。
一方、いつもコラムの感想などをメールしてくださる介護ホームに入所する94歳の“お友達”も、毎回、介護ホームの悲惨な状況を訴えている。
「外出禁止になり、家族との面会も禁止され、さらに、これまでのレクリエーションもすべてなくなってしまったので、入所者は狭い個室ですることもなく、時間が過ぎるのを待っています。認知症が進み、廊下をあてどなくさまよっている人が多くなりました。
コロナ前、唯一の話し相手だった女性も、耳が遠くなり会話ができなくなってしまいました。
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