(写真:Shutterstock)

 「独立したときは、十分準備をしたつもりでしたし、覚悟もしていました。でも、実際に仕事がなくなった今は、漠然とした不安が大きいですね」

 ため息交じりにこう話すのは、50代の元会社員。数年前に約30年勤めた某大企業から独立し、その後は「いい具合に稼げていた」(by 男性)。実際に昨年(2020年)、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した当初も、仕事への影響はあまりなかった。

 ところが、「意外と大丈夫」→「突発的に入っていた仕事がなくなる」→「持続化給付金でなんとかなりそう」→「コロナ」→「コロナ」→「コロナ」といった具合に、コロナの影響がジワジワ出始めた。そして、ついに昨年末、収入の大半を占めていた大口の仕事がなくなってしまったそうだ。

「真の私」が揺らぐことも

 “変化”は常に突然来る。どんなに備えていた“つもり”でも、マイナスの変化の衝撃は大きく、想像以上に痛い。とりわけ独立した人、すなわち個人事業主の場合、「〇〇会社の社員」だの「役員・課長」だのといった身にまとう飾りがないので、変化がストレートに響き、「私」が揺らぐ。

 半年前、本コラムの「増える『50代おじさん起業』と稼げない現実の過酷さ」で、コロナ禍で相次ぐ希望退職でお尻に火がつき、独立を考えている人が多いことを踏まえ、「独立後の厳しいリアル」を書いた。
 が、今回の男性はすでに独立し、うまく回せていた人。「会社員アイデンティティー」じゃない「真の私」のアイデンティティーを確立できたのに、再びキャリアアイデンティティーを構築する羽目になり、不安と孤独に苦悩していた。

 ただ、個人的な経験を申し上げれば、独立とは、良くも悪くもそうした変化の繰り返しであり、だからこそ面白いし、やりがいもある。自分の限界に何度も直面し、悲鳴をあげ、孤独と不安、自尊心の喪失など、ありとあらゆるネガティブな感情に翻弄されながらも、気がつくとなんとかかんとか生き延びている「私」に気づく。

 そして、長い間そんな自分と向き合っていると、「きっと○○会社の会社員も同じなんだろうなぁ」と気づく。一つだけ違うのは、会社というコミュニティーの中にいると、なんとなくやり過ごせる期間が、長くなるだけなんじゃないか、と。

 というわけで、今回は「自分のキャリアのつくり方」について、あれこれ考えてみようと思う。

続きを読む 2/5 独立したらすべてが自己責任

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。