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 「望まない孤独」が注目されている。

 人間は独りで生まれ独りで死ぬ。つかの間の孤独感は日常にあふれている。よって、つい私たちは「それも人生」と受け入れてしまいがちだ。だが「孤独」と「つながり」はコインの表と裏ではない。両者が矛盾なく、同時に成り立っている状態こそが精神的にも身体的にも社会的にも健康な状態である。

 ところが、人とつながりたいのにつながることができない。「助けて!」と言いたいのに言うことができない。言える人もいない。そんな孤立した状態に置かれ、生きる力を奪われる人たち、特に若い人が以前にも増して顕在化している。

珍しく迅速な対応をした政府

 そこで政府は、坂本哲志内閣府特命担当大臣(少子化対策、地方創生)に「孤独・孤立対策」を兼務することを指示。さらに、3月末の決定を目指す「子供・若者育成支援推進大綱」の改定案で、「孤独や孤立問題への対応を強化する方針」を明記した上で、増加する自殺についても「最重要課題」と位置付けた。関係省庁間での連携を密にし、対策を急ぐ考えだという(読売新聞オンライン「【独自】不安高まる若者の『望まない孤独』…過去最多の自殺、コロナ禍で政府が対策強化」)。

 2020年の1年間に自殺した小中高校生は479人で、前年の339人から140人増えて過去最多。内訳は、小学生が14人(前年比8人増)で、中学生136人(同40人増)、高校生329人(同92人増)で、高校生は男子が191人(同21人増)、女子は138人(同71人増)だった(文部科学省調査)。

 また、大人も含めた自殺者数(速報値)は2万919人で11年ぶりに増加。男性(1万3943人)が女性(6976人)を依然として大きく上回っているが、男性が前年より135人減ったのに対し、女性は885人も増えた(1月22日に警察庁、厚生労働省が発表したデータ)

 コロナ禍の厳しい状況が、若者や女性などの社会的に弱い立場の人に及んでいることは言うまでもない。しかしながら、男性や高齢者の自殺率は依然として高い。5年ほど前には就職氷河期にフリーターという道を余儀なくされた人たちが、「助けて」と言えずに食事も取れずに餓死したケースがあり、ここ数年は引きこもりの高齢者も社会的な問題になっている。

 詰まるところ、孤独・孤立問題は日本の長年の重要な課題だったわけだ。

 今回、政府がこれまでにないスピード感で孤独・孤立問題の支援に舵(かじ)を切ったのは、自由民主党の若手議員の力によるところが大きい。コロナ禍で孤独・孤立問題が深刻化していることを受けて、自民党若手議員有志で「望まない孤独」問題に関する勉強会を発足。その呼びかけ人が、「孤独感にさいなまれた経験を持つ」という鈴木貴子衆院議員。2002年にあっせん収賄容疑で逮捕・収監された、鈴木宗男氏の長女だ。

続きを読む 2/5 「孤独」の研究、端緒は1970年代

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