「個人の成長という観点から見た場合、企業は自律的な欲求充足に加えて、共同的な欲求充足をもたらすことが可能であり、この点においていかなる個人的心理療法にも勝っている」とはマズローの言葉だが、「専門知識を生かした技術指導や他の事業部への営業先の紹介など=出来高オプション制度」は、共同的な欲求充足につながることが期待できる。

本来の「仕事ができる」職場

 いずれにせよ、「自分が培ってきたノウハウを後輩に教えて、仕事をサポートする」という経験は、やりがいや働きがいにつながるものだ。後輩からの「ありがとうございます」という言葉は、最高の褒美になる。「出来高オプション制度」は、これまでは「自分でかみしめるだけだった喜び」に、カネが出る。会社側が「ありがとうございます」と有形の褒美をくれるのだ。

 働くことは「生きている価値」と「存在意義」をもたらすとても大切な行為だ。つまるところ、その本来の「仕事ができる」職場を三谷産業は目指しているのだろう。

 実際、ディサークルの西岡社長に連絡したとき、真っ先に返ってきたのが次のコメントだった。

 「当社グループに限らずどの企業でも、私と同世代の方々が、バブル期、その後の低成長期時代、リーマン・ショックなどを経験しながらも、各社の成長を支えてきました。その人財が『後進の育成』や『自分が持っているスキルや能力』を、やりがいを持って発揮できる制度になると考えています」

 そこで「もっと本音が知りたい!」といくつかの質問を、メールでぶつけてみた。本当は実際にお会いして、共有する空気の中でしか聞けないポロリとこぼす言葉を引き出したかったけど、コロナ禍で無理。それでも「その場にいる人しか絶対に紡げない」、貴重なコメントをいただけた。

 「やっぱり一緒に仕事をしてきた先輩たちが、なんとなく元気がなくなっていくのは寂しいなぁと思ってましたよ。60歳定年でゴールのようなイメージができてしまっているからか、嘱託となって終わった感が出てきてしまうのでしょうかね。守りに入っているなぁという印象がありました。

 でも、4月からの新制度で、嘱託=年寄り扱いされる、というイメージはなくなります。正社員として目標をたて、人事考課に沿った昇給・賞与があれば、モチベーションは高まります。

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