さて、いかがだろうか。

 4月から、70歳まで働く機会の確保を企業の努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が施行されるため、シニア社員と個人事業主契約を結ぶ新会社を設立したり、成果主義を導入したりするなど、戦略的に競争させることでシニア人材活用を進めている企業はある。

 そういった動きは個人的にいいと思うし、いい形で回ればいいなぁと期待している。おそらくその動きに追従する企業も出てくるであろう。

会社とはチームである

 だが、そういった動きと三谷産業の新制度はちょっとばかり違う。似て非なるものというか、うどんときしめんの違いとでもいうべきか。

 つまり、三谷産業の新制度は(米国の心理学者である)アブラハム・マズローが提唱した「ユーサイキアン・マネジメント(働く人々が精神的に健康であり得るためのマネジメント)」にかなり近い。

 例えば、「出来高オプション制度」だ。

 ベテラン社員には決してカネで買うことができない「経験」がある。「経験なんて使い物にならない」と口をとがらせる人がいるけど、「ベテラン社員をナメるなよ!」と言い返したい。

 経験知(身体知)は、実際に個人が体感したことで「言葉にされていない知識」として身に付く、いわゆる暗黙知(tacit knowledge)だ。

 暗黙知の最大の価値は、想定外の出来事に対処するための最良のリソースになるってこと。

 どんなに詳細なルールやマニュアルを作ったところで、そこに「人」がいる限り、網の目からこぼれ落ちる事態や事件が起こる。そんなとき、現場の対応次第で、小さな事件がとてつもなく大きな問題になってしまったり、大問題になりそうな事件が意外にもすんなりと収まってしまったりもする。

 その「現場の力」を左右するのが暗黙知であり、想定外で生かされる暗黙知は決して「見える化」できない。まさに人間の力だ。人間だけが持つ「創造力(空想力)」と「他者と関わりたいという衝動」が 暗黙知と結びついたとき、不可能が可能になり、有限が無限になる。

 その現場の力を三谷産業は「きちんと評価しましょう!」と考えた。それは同時に、ベテラン社員が経験で手に入れてきた有形・無形のリソースを「後輩たちに積極的に移転してくださいね!」というトップからのメッセージだと思う。

 会社とはチームであり、「1+1=3、4、5」となるチームをつくることで会社の生産性は向上する。「会社」というコミュニティーで共にする時間が、目に見えないつながりを育み、「個」の力を超えたチーム力を最大限に発揮させる。会社とは常に共同体であり、いい「部品」を集めるだけでは生産性は向上しない。

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