私は声にならない声を取り上げ、それが決して「不運な人の特別なエピソードではない。社会のひずみが生んだ不運である」ことを書き続けてきた。それは、書くことを生業としてから一貫して私がやってきたことだ。そう、個人の問題ではなく社会の問題なんだ、と。

 コロナ前には、そういう声なき声に耳を傾け、自分とは違う他者を認め、彼らを取り巻く環境を知ろうとしていた人たちが、それをしなくなった。声なき声を取り上げることにすらアレルギーを示すコメントや、問題提起を政府批判としか捉えないコメントには、申し訳ないけど違和感を覚えたし、暗たんたる気持ちにもなった。

 社会の問題として受け止めるのではなく、「自己責任、自助」という言葉で正義を語り、他者を切り捨てるように変わってしまったのだ。

社会のひずみが拡大

 新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めは、見込みを含めて7万6543人(12月11日時点、厚生労働省発表)。前の週よりも1202人増加し、アルバイトなどの非正規労働者がその6割に当たる702人を占めた。
 この数字はハローワークに出向く余力がある人の数なので、氷山の一角でしかない。

 10月の自殺者は2158人で、男性は前年同月比で21.3%増えたのに対し、女性は前年同月比でなんと82.6%増。人数では男性1306人、女性852人と男性が上回るが、コロナ禍がいかに女性に厳しいものかを物語っている(11月24日付厚生労働省「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」)。

 さらに、4~9月の失業率は前年同期と比べて、若年者ほど上昇幅が大きく、収入も減少したことが分かっている(労働政策研究・研修機構「若年者に厳しい新型コロナの雇用・収入面への影響――JILPT個人調査の年齢別分析」)。

 具体的には、
・15~19歳の失業率が最も高く、25~29歳が2番目に高い。
・企業に雇用されている労働者のうち、「コロナの影響があった」と回答した人は、20~29歳の50%弱が最も多く、30~39歳が次に多かった。
・影響があった内容のトップは「収入の減少」で、「勤務日数や労働時間の減少(休業を含む)」「業務内容の変更」と続いていた。
・20代と30代の3割以上が「収入が減った」と回答した。

 非正規、女性、若者という属性で生じる問題は、コロナ前にも存在し、コロナにより顕在化した社会のひずみの一部だ。非正規や女性の問題は、何度も書いているのでご存じであろうが、若者も同様である。

次ページ 自己責任にする大義名分に