第1波における、4月の緊急事態宣言のときも、松井一郎大阪市長が、「医療崩壊させないためのとりで」としてコロナ専門病院に位置付けた大阪市立十三市民病院では、多くの離職者が出た。コロナ患者が一時的に減った6月ごろから医師や看護師らの離職が相次ぎ、10月までに医師4人、看護師14人を含む25人ほどの職員が病院を離れてしまったのだ(12月2日付朝日新聞)。

 朝日新聞の取材によれば、今回の第3波で病院を運営する地方独立行政法人大阪市民病院機構や市などは、市立総合医療センターなどから、看護師や医師を十三市民病院に派遣することを決めたという。
 しかし、十三市民病院の西口幸雄院長は「精神的な負担を考えると、離職を防げないかもしれない。やっていけるのかという不安は変わらない」と コメントしている。

今起きている問題、根っこはコロナ前から

 また、自衛隊の「看護官」ら10人が、旭川市の病院と福祉施設に派遣され、12月15日には7人が大阪市に設置される大阪コロナ重症センターに派遣されることになったが、看護官たちが普段勤務している自衛隊の病院でも多くのコロナ感染者を受け入れているので人手は限られる。
 岸信夫防衛相が「(医官と看護官の)余力を精査しているところ。派遣要請をそのまま受け入れるのは困難を伴うと思う。現段階ではできる限り対処していきたい」と12月8日の記者会見で述べたように、“看護官”も“看護師”と一緒。厳しい状況で身を粉にして働いてるのだ。

 そして、何よりも問題なのは、もともと医師、看護師は、介護士と同様に人手不足が深刻な職種の代名詞で、1990年に1万2199床あった感染病床は、2019年には1888床まで減少しており(厚労省「令和元(2019)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」)、今回のようなパンデミックに耐えられる状況ではなかった。

 “医療崩壊”という言葉から、あたかも医療現場のひっ迫ぶりは「コロナによるもの」と受け止められがちだが、これまで繰り返し書いているとおり、コロナ禍で起きているすべての問題はコロナ前の社会に内在していたもので、それが顕在化したにすぎない。
 冒頭の医療従事者の話からもわかるように、医療現場にかねてあった“ひずみ”がコロナ感染拡大で、より激しくなってしまったのだ。

 だいたい夏前から「冬場の感染者は増える」と専門家たちが散々警戒を促していたのに、悲しいかなその声は届かなかった。もちろん国だって何もしなかったわけではないし、それなりの準備はしてはいたのだろう。が、備えは薄かったと言わざるを得ない。

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