でもね、それを誰が責められますか? 責められないですよ。それほどまでに疲弊してるんです。

 だいたいコロナ感染の最前線で働いている看護師たちは、通常の業務だけを任されているわけではありません。患者さんが高齢の場合には、意思疎通が難しく時間がかかったり、着替えやトイレなどの介護業務を兼任したりするケースもあります。コロナ感染ではさまざまな書類を記録しなくてはいけないので、そういった業務に割かれる時間も負担です。

犠牲を「美徳」とする空気

 病院からクラスター(感染者集団)は絶対に出せないという恐怖感は、ものすごいプレッシャーです。看護師は患者さんの検温を繰り返し行い、症状や呼吸器の確認も頻繁に行うので、感染リスクは当然高くなります。
 なのにクラスターを出した病院への誹謗(ひぼう)中傷は、ものすごいです。プロ意識が欠けているとか、医療従事者として失格だとか。なんでそこまで言われてしまうのかと情けなくなる。感染の不安からうつ傾向になってしまう看護師もいるほどです。

 自宅に帰っていないスタッフは、精神的な疲れを癒やす時間もありませんし、院内では飲食の提供をしていた店をクローズしているので、食事ひとつ取るのも大変です。
 ただ……個人的には、今に始まったことじゃないという思いもあります。確かに今の状況は限度を超えてますが、もともと看護の現場は決して楽なものではありませんでしたし、理不尽を感じることも度々ありました。

 夜勤できる看護師は限られていますので、よほど経営状態がいい病院以外は慢性的に人手不足です。世の中には看護師の給料は高いと思い込んでいる人もいるようですが、決して高くありません。

 そもそも医師と看護師は両方とも専門職として対等なのに、医師の下に看護師がいるという、いわば看護師を医師の補助的な役割とする昔ながらの認識がいまだに強く残っているんです。
 それって、どういう意味かわかります? 看護師という仕事では、常に女性性が求められてしまうのです。もちろん患者さんに寄り添った看護はプロとして必要です。
 でも、『女だからこれくらいして当たり前』といった見方が強い。『女の癖にこんなこともできないのか』と叱られることもあります。なのに産休が取りづらい空気があり、出産と育児のために退職し、その後、非常勤で勤めているというパターンが多いんです。

 極論を言うと、患者さんや医師のために自分を犠牲にしてでも、身を粉にして働くことが美徳とされてしまうのです。そういった空気が、コロナ感染拡大でも余計に看護師たちを追い詰めているんじゃないでしょうか」

 ……さて、いかがだろうか。

 件のコメントにあったような連鎖退職は、今後さらに増えるのではないか。私がコンタクトした他の医療関係者も、そのことを懸念していた。

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