
「正体がつかめない未知のウイルスへの恐怖に、泣きながら防護服を着るスタッフもいた。防護服の背中に名前を書いてあげながら、仲間を戦地に送り出しているような気持ちになった」
「『頑張れ、永寿病院 地元有志一同』の横断幕が目に入り、まだ私たちはここにいてもいいんだと思えた」
これらは2月26日に脳梗塞の診断で入院した1人の患者さんを起点とする新型コロナウイルスの集団感染が発生し、214人が感染、43人が亡くなった永寿総合病院(東京・台東)の看護師さんたちの言葉である。
精神的にも肉体的にも限界……
コロナ感染第1波で“炭鉱のカナリア”となった同病院の院長が、当時の状況をつまびらかに報告・説明したのは2020年7月のこと。
「私どもの経験をお聞きいただくことで、新型コロナウイルス感染症に対する皆様のご理解や、これからの備えにお役に立てれば」と、院長は会見で話していたけど、再び、いや、“このとき以上”の悲鳴が、日本全国の医療現場で上がっている。
そして、その悲鳴はもはや「目の前の人をとにかく助けたい」という、医療従事者たちの使命感だけでは乗り切ることができない事態に発展していることは、連日メディアで医師や院長先生が窮状を訴えているので、皆さんもご承知のとおりだ。
そこで今回は、現場の医療スタッフから話を聞くことができたので、この話題を取り上げようと思う。
ただし、病院によっては現場の看護師や医師にSNSなどでの発信を禁じているケースもあるし、今回答えてくれた私の知人も、「医療関係者ということ以外の属性は決して出さない」という条件で、掲載を承諾してもらった。
なので、“いち医療関係者の声”ということで、まずは聞いてほしい。
「世間では医療崩壊が起きるだの、医療崩壊を起こさないようにしなければだのといったコメントが氾濫していますが、起こる起こらないに関係なく、すでに看護師や医師は精神的にも肉体的にも限界です。
同僚の中には、家族に『もうやめてほしい』と言われて辞めた人もいます。
若い看護師の中には子供がいる場合もあるし、みな家族に感染させる不安を抱えているので、1人が辞めてしまうと退職者が続くことも少なくありません。
幸いうちの病院ではそういった状況にはなっていませんが、もともと職場の人間関係や上司との折り合いが悪かった看護師は、やっぱり辞めちゃいますよね。
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