リモートでは「社員の自立が大事」と誰もが言う。
 だが、必要なのは「自立」じゃなく、「自律性」だ。

 自律性とは「自分の行動や考え方を自己決定できる」感覚である。この自律性を高めるには、上司は、今まで以上に部下たちの状況を確認し、仕事を進めるために有効な情報の提供やアドバイスをしなくてはならない。そういった上司のサポートにより、部下の自律性は高まっていく。

 自律を「自立」と勘違いすると、上司は部下に自立を求めるあまり、部下を突き放してしまいがち。

 また、会社側も「ひとつよろしく!」と、現場任せにするのではなく、上司の支援をきちんとしてほしい。

 上司たちの多くは役職に就き、大きな決断をしなければならないときに、「若い頃、世話になった〇〇さんならどうするかな」と、思い浮かべて参考にしていた。いわゆる「心の上司」だ。
 だが、リモートではそれが通じないのだ。リモートで生産性を上げたいなら、リモート仕様のマネジメント教育に投資し、育てなくては無理だ。

「自分は大丈夫」と再確認する瞬間

 と同時に、おそらく多くの人がリモートワークを経験したことで、フェイスtoフェイスの価値を体感したであろう。
 少なくとも私はその価値をしみじみ感じている。

 人と会えてうれしい、というのとはちょっと違う。どちらかと言えば、「自分は大丈夫だ!」というような内面の感覚に近い。フェイスtoフェイスの価値をどういかすか? これも会社に課せられた課題であろう。

 詰まるところ、人は「自分の存在」を他者を通じてしか知ることができない。「人」とつながるにはその場の空気、すなわち視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を共有できる“場”が必要不可欠。2次元世界の「見る(視覚)、聞く(聴覚)」だけでなく、「触れる(触覚)、匂う(嗅覚)、味わう(味覚)」が満たされて初めて、心と心の距離感は縮まり、その温度が「よし!がんばろう!」という気持ちに火をともすのだ。

コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)


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この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

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