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健康社会学者の河合薫氏(左)と立命館アジア太平洋大学(APU)学長である出口治明氏(出口氏写真:山本 厳)

 健康社会学者の河合薫氏と立命館アジア太平洋大学(APU)学長である出口治明氏によるオンライン対談。河合氏が「昭和おじさん社会」と呼ぶ令和ニッポンが抱える様々な課題について語り合った「第1回」「第2回」に続き、今回の新型コロナウイルスの世界的な大流行を歴史の視点ではどう捉えるべきなのかなど、読みどころ満載の第3回をお届けする(編集部)。

河合薫氏:出口さんは歴史にもお詳しいので教えていただきたいのですが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を、人類の歴史の視点から捉えると、何を学び、今後、何に備えるべきなんでしょうか。

出口治明氏:新型コロナウイルスの感染拡大は簡単にいえば自然現象です。ウイルスは何十億年も前から存在しているので、たかだか20万年の歴史しかないホモ・サピエンスに比べれば、はるかに大先輩です。未知のウイルスとホモ・サピエンスが出合えば100年に1回ぐらい、一定の割合でパンデミック(感染の世界的な大流行)は起こります。

 さらに今回の新型コロナは未知のウイルスですから、薬やワクチンができるまでは、基本的には接触機会を減らすステイホームしか対策がないですよね。一方で今後、感染が下火になればニューノーマルで、つまりマスク、手洗い、ソーシャルディスタンスという対策をして、街に出ていくしかない。また蔓延(まんえん)すればステイホームに戻る。

 要するに薬やワクチンができるまでのウィズコロナの時代は、ステイホームとニューノーマルを行ったり来たりするしか対処法がないんですね。ワクチンや薬が開発されたアフターコロナの時代になれば、新型コロナウイルスはインフルエンザ並みの感染症になるわけですから、一言で言えばハグし放題になるわけです。ニューノーマルの生活スタイルも必要がなくなるわけです。

 1つ付け加えると、アフターコロナになっても新型コロナウイルスが登場する前の状態には戻りません。それはなぜかといえば、このウィズコロナの時代にテレワークが進んだからです。テレワークは便利です。人間は横着ですから、便利なものは手放さないのです。

アフターコロナはいつ来る?

河合:ウィズコロナとアフターコロナとを分けて考えるべきだという出口さんのご意見には大賛成なのですが、ウィズコロナは長引きそうですよね。あと1年、2年ぐらいと覚悟しておいたほうがいいんでしょうか。

出口:意外に短いという人が多いですよね。

河合:えっ、そうなんですか。

出口:だって世界中の免疫学者などが徹夜で対策を研究しているというジョークがあるくらいですから。薬やワクチンを開発できたら確実に歴史に名が残りますよね。おそらくノーベル賞ももらえる。さらに数千億円規模でもうかったりしそうなわけですよ。こんなチャンスは100年に1回もない。だから、もし河合さんが第一線の免疫学者だったら……

河合薫(かわい・かおる)氏
1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人を超える。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学講師、早稲田大学非常勤講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。(写真:稲垣純也)