出口:今、定年の年齢が65歳とか70歳に引き上げられているのは、年金支給年齢と接続しているというだけの話です。行動しなければ世界は変わらない。自分たちの力で職場を変える意気込みに期待したいですね。評論家は要らないと思います。

河合:あの……、出口さんは、昭和の時代につくられた仕組み、いわゆる日本型雇用についてはどう思われているのですか?

出口:残すべきものは何もないし、守るべきものも何もないと思います。一括採用、終身雇用、年功序列、定年というのは、人口の増加と高度成長という環境でしか機能しないガラパゴス的な労働慣行にすぎません。

長期雇用は労働者の労働意欲を高めるのか

河合:私は長期雇用というのは、そもそも制度ではなくて経営哲学だと思っているんです。長期雇用は、人生の土台です。(米スタンフォード大学ビジネススクール教授であるジェフリー・)フェファー氏の名著『人材を活かす企業』では、日本企業の長期雇用がいかに働く人たちの労働意欲を高め、能力を引き出し、組織力を高めているのかが分析されています。

 ですから、「あなたたちの人生を支えますよ」という経営哲学を持った経営者たちがもっと増えてくれればいいなと。その上で転職するなり、中途採用をするなりすればいいと。

出口:僕は人間が考えた理論でまともなものは2つしかないと思っているのです。1つは、アインシュタインの相対性理論で、これは時間と空間についての理論です。2つめは、生き物に関するダーウィンの理論です。ダーウィンは、強いものや大きいものや賢いものが生き残るとは限らへんでと言っているわけです。何が起こるか分からないんだから、何かが起こったときに、生物にできることは適応だけだと。

 このダーウィンの考えを、僕は圧倒的に正しいと信じているので、社会がどう変わっていくのか分からないときに、これを残したらいいとかいうものが分かるはずがないですよね。何かを残したらいいと思うのは、個人の主観にすぎないのですよ。

 僕は人間は正直であるべきで、うそを言ったらあかんということを、コアにすべきだと信じています。しかし、社会の仕組みとして、これは守りたいというようものをつくるということは、自分の考えに型をはめて、鍵を掛けて、それ自身を疑うことの妨げになります。これは退化につながりますよね。

 すべてを疑い、自分の頭で考える。それが人間の在り方だと思うので、我々ができることは変化に適応して次の世代にみんながよりよいと思う社会を残していくことだけだと思っています。長期雇用が労働者の意欲を高めるかどうかもまず疑ってかかるべきです。

<span class="fontBold">出口治明(でぐち・はるあき)氏</span><br />立命館アジア太平洋大学(APU)学長<br />1948年、三重県美杉村(現・津市)生まれ。1972年、京都大学法学部卒業後、日本生命保険入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年退職。同年、ネットライフ企画を設立し、代表取締役社長に就任。2008年、ライフネット生命に社名を変更。2012年上場。10年間社長、会長を務める。2018年1月より現職。(写真:山本 厳)
出口治明(でぐち・はるあき)氏
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県美杉村(現・津市)生まれ。1972年、京都大学法学部卒業後、日本生命保険入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年退職。同年、ネットライフ企画を設立し、代表取締役社長に就任。2008年、ライフネット生命に社名を変更。2012年上場。10年間社長、会長を務める。2018年1月より現職。(写真:山本 厳)

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