出口:さらに日本では夜の8時、9時まで残業した後、飲みニケーションという悪習がある。上司と飲みに行く中で評価されることもある。女性は飲みニケーションに入れませんから、女性の社会的地位が低かったのは、家事、育児、介護が女性の仕事だという偏見の上に、長時間労働や飲みニケーションに参加できなかったことが、要因になっているのですね。

河合:会社は上司・部下、先輩・後輩といったタテの序列でつながっているので、どうしたって接する時間の長さと密度で、人間関係の強弱が決まりがちです。そういった関係性は、ケア労働に時間を取られている女性には不利ですよね。

出口:でも、テレワークが進んだことで、みんなが飲みニケーションで上司の説教を繰り返し聞いているより、家族とご飯を食べるほうが楽しいなと気付いた。しかも、テレワークには付き合い残業などという概念がありませんから、ウィズコロナの時代は女性にとって、現象的には大変ですけれど、我々の行動いかんによっては、だらだら残業、長時間労働、飲みニケーションなどの悪習を断ち切る契機になるかもしれませんよね。

河合:出口さんは、現在のライフネット生命の前身であるネットライフ企画を設立なさって、インターネットでつながることで商売ができる仕組みをお考えになった。そこで社長をなさっている間は、出口さんご自身は働く人たちの性差別問題をどのように解決なさったんでしょうか。

採用に必要な情報、3つだけでよい

出口:僕は自分で就業規則を書き、定年なし、原則年俸一本で、米グーグルのように性別フリー、年齢フリーの会社にしました。ご存じだと思いますが、グーグルでは採用をするときの情報は、3つだけでいいといわれています。「今、何をしているか」「過去に何をやったことがあるか」「将来どうしたいか」という3つの情報だけで、適正な人材が採用できるという。国籍はおろか、年齢や性別などの情報が分かると採用する側にバイアスがかかってしまいます。例えば年齢が書いてあったら、ひょっとしたら愚かな採用者は若いほうがいいと思ってしまう。

河合:そういう人、結構います(笑)。若いほうがいい、新しいほうがいい、といった色眼鏡的思考は、ベテラン社員の活躍の場も奪いますよね。大人(20歳以上)の10人に6人が50代以上という人口構成を考えれば、ベテラン社員を生かさないでどうする?と思うのですが、50歳になった途端に一斉に肩たたき研修をやる。「今まで必死に頑張ってきて、まだやるべきこともたくさんあるのに、突然年齢で区切るのか!」という不満は、インタビューでも繰り返し聞いてきました。

<span class="fontBold">出口治明(でぐち・はるあき)氏</span><br />立命館アジア太平洋大学(APU)学長<br />1948年、三重県美杉村(現・津市)生まれ。1972年、京都大学法学部卒業後、日本生命保険入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年退職。同年、ネットライフ企画を設立し、代表取締役社長に就任。2008年、ライフネット生命に社名を変更。2012年上場。10年間社長、会長を務める。2018年1月より現職。(写真:山本 厳)
出口治明(でぐち・はるあき)氏
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県美杉村(現・津市)生まれ。1972年、京都大学法学部卒業後、日本生命保険入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年退職。同年、ネットライフ企画を設立し、代表取締役社長に就任。2008年、ライフネット生命に社名を変更。2012年上場。10年間社長、会長を務める。2018年1月より現職。(写真:山本 厳)

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