出口:製造業の工場モデルは必然的に男性の長時間労働を理想とするので、戦後の日本社会は配偶者控除や3号被保険者というゆがんだ制度をつくり、男は仕事、女は家庭という性差別を推進してきました。これを納得させるために、(子供が3歳になるまでは母親は子育てに専念したほうがよいなどとする)3歳児神話などのでたらめをでっち上げて、この性分業を推進してきたことが、戦後の高度成長がうまくいった原因でもあり、高度成長が終わった後、社会が低迷している原因でもあるわけですよね。その象徴が121位ショックです。

河合:各国の男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」ですね。2016年に111位、2017年に114位で、2019年は121位にまで転落して、中国や韓国などのアジア主要国と比べても低くなりました。それ以上に問題なのは、最近は話題にもならなくなってしまったことです。世界と比べてなんの意味があるのか?と、順位付けすることに嫌悪感を示す人も少なくありません。

出口:だから男社会というよりは、もっとはっきりとこの性差別が問題の根源だと言ったほうが分かりやすい気がしますよね。

河合:確かにそうかもしれません。私、実は今回のコロナで、在宅勤務やリモートワークが当たり前になり、女性活躍が一気に進むんじゃないかと期待していたんです。ところが、残念なことに、実際にはそうはならなかった。むしろ女性たちの多くが、今まで以上に厳しい状況に追い込まれてしまったように感じています。

出口:両面あるんじゃないですか。今、コロナを巡って行われている議論が錯綜(さくそう)しているのは、「ウィズコロナ」と「アフターコロナ」を分けていないからです。きちんと時間軸を分けたほうがいい。例えば、短期的には労働力が余ってしまったので、普通に考えたら非正規(労働者)から切っていきますよね。

河合:非正規には、やはり女性が多いですよね。

ウィズコロナで割を食うのは女性

出口:非正規の大半は女性ですから、ウィズコロナでは女性が割を食うという一面は確かにあります。でも、ポストコロナでは事情は変わります。テレワークというのは何かといえば、紙と通勤時間と、そして通勤場所の制約から、働く人たちを自由にするわけですね。オンサイトとテレワークとの一番の違いは、忖度(そんたく)によるだらだら残業や、付き合い残業がなくなることです。

 日本の戦後社会では長時間労働が善とされてきました。その延長線上で、長時間会社にいる人間はロイヤルティーが高いだの、立派だのという偏見が助長されてきたわけです。何で女性の地位が低かったかといえば、性分業によって家事、育児、介護は女性の仕事という偏見が行き渡ったことにあります。女性は家事、育児、介護のことが頭にあるから、長時間労働ができなかったのです。

<span class="fontBold">河合薫(かわい・かおる)氏</span><br />1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人を超える。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学講師、早稲田大学非常勤講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。(写真:稲垣純也)
河合薫(かわい・かおる)氏
1988年、千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。2004年、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、2007年博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は700人を超える。長岡技術科学大学非常勤講師、東京大学講師、早稲田大学非常勤講師などを務める。医療・健康に関する様々な学会に所属。(写真:稲垣純也)

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