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(写真:Shutterstock)

 50代の“会社員”がざわついている。
 とうとう尻に火がついた、と表現したほうが正確かもしれない。

 連日、名だたる企業の「過去最悪の赤字額」が発表され、上場企業の希望退職募集人数も1万人を突破(東京商工リサーチ2020年9月15日集計)。コロナ前から急増していた「黒字のうちに辞めてもらっちゃお!」派に、「もう無理なんでひとつよろしく!」派の赤字企業が加わり、それまで「とりあえず定年まで様子見」だった人たちが、「今変わらなくて、いつ変わる!?」とざわついているのだ。

 「コロナで在宅勤務を経験して、自分が社畜だったと気づいてしまってね。コロナ前はそんなこと思ったことなかったし、社畜という言葉に嫌悪感もありました。だって、会社員なんですよ。会社で一生懸命仕事しないで、どうしろっていうんだと。
 でも、他の生き方もあるんじゃないかって、独立を考えるようになりました。

 長年社畜をやってきた人間が独立だなんて、笑われてしまうかもしれませんが、自分がどこまでやれるのかを試してみたい。この先行きが不透明な状況で、行動に移すのはリスクが高いことは分かっています。
 でも、このままでいいのか、というか、このままで終わりたくなという気持ちが、日に日に高まっている。自分でも、ちょっとびっくりです。
 それで河合さんに、独立して成功するために一番大切なことを聞きたいと思ったんです。
 もちろん独立が簡単なことじゃないってことは分かっています。それでも、最低な状況なときに動いたほうが、絶対何かにつながると信じているんです。なので、そのために絶対に必要なことを知りたいんです」

こう話す男性は、大手企業の会社員、54歳だ。

個人事業主になる“おじさん会社員”急増中

 “脱サラ”という言葉がよく使われていた1980年代は、会社を辞めてラーメン屋や焼鳥屋、そば屋などになる人が多かった。が、「飲食には手を出すな!」と警告する専門家もいるほど、飲食をやって成功した人はごくごく一部だ。夢を求めても食っていけるわけじゃない。大きな組織で生きてきたサラリーマンが「右手ポンポン」で稼ぐのは、本人が想像する以上に至難の業。

 その一方で、2000年以降、会社から独立して、個人事業主になる50歳以上の“おじさん会社員”は、増加傾向だ(以下のグラフ)。

起業家の年齢別構成の推移
出所:中小企業庁2017年版「中小企業白書」。※ここでいう「起業家」とは、過去1年間に職を変えた、または新たに職についた者のうち、現在は会社等の役員または自営業主。兼業・副業は含まれていない