
全日本空輸(ANA)が、従業員の年収が約3割減になるなどの大胆なコスト削減に踏み切ることが判明し、テレビや新聞各紙が大きく取り上げている。「ANAショック」と呼ぶ人もいるようだが、こういった流れになることは、社員たちもある程度、分かっていたはずだ。
なんせ新型コロナウイルスの感染拡大が始まった、かなり早い段階から、同期や知人などから「かなりヤバイ」という話は聞いていたし、4月から客室乗務員6400人を対象に、1カ月に3~5日程度の一時帰休も実施されている。
が、年収3割減は痛い。というか、「3割」という数字は航空業界が直面している未曽有の危機をリアルに突きつけるもので、社員たちの不安はマックスになっていることであろう。
とはいえ、トップが「雇用は守る」と宣言しているので、なんとか踏んばってほしいと“一卒業生”として心から願っている。
コロナ禍で試される「経営哲学」
――「羽田や成田に行くと利用者が本当に少なくて、見たことがない景色を前に、若い社員が不安そうに立っているわけです。ですが、我々は『まずは雇用を守る』と宣言しています。現在は大変な状況ですが、いつかは必ず終息します。そのときに、速やかにネットワークを再開しなければなりませんので、対応する体力と社員を確保しておかなければなりません」
これは、ANAホールディングスの片野坂真哉社長が「インタビュー記事」(日経ビジネス電子版4月10日付)で「空港は閑散としています。社員は動揺していませんか」と聞かれて、答えた内容である。
このインタビューの際、片野坂社長が考えていた“そのとき”と、今考える“そのとき”は同じなのだろうか。あるいは想像以上の厳しい状況になっているのだろうか。
いずれにせよ、厳しいのはANAだけでない。様々な業種のそれぞれの会社のトップが、雇用の維持と会社の存続について難しい決断を迫られている。
かつて経験したことがない予測不可能な厳しい市場と、コロナ禍で働く人たちに起きている変化、さらにはアフターコロナに待ち受ける“新たな世界”を前に、経営者の覚悟が問われているのだ。
それは経営者の決断次第で、社員たちの今後の人生が大きく変わることでもある。なぁんて書き方をすると、「ちょっと大げさじゃないか!」と怒る人もいるかもしれないけど。
そこで、今回は報道されたANAのコスト削減策を軸に、コロナ後も企業が存続し続け、社員が元気であり続けるためのヒントを考えてみようと思う。
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