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(写真:Shutterstock、写真はイメージ)

 「河合さんって、フラッと死にそうになったことってないですか?」
 数年前インタビューした男性会社員に、唐突にこんな質問をされたことがある。

 「フラッと」というのんきな言葉を、「死」という言葉に結びつけた男性の真意が分からず、私はつい、「私……ヤバい感じですか?」と、これまた、すっとんきょうな質問返しをしてしまった。

 すると男性は、「私、駅のホームで電車を待ってるときに、フラッと……ホントにフラッと……落ちそうになったことがあるんです。後ろの人に腕をつかまれて。『あ、自分、ナニやってるんだろ』って自分でも驚いてしまったんです」と、自身の経験を話した。

 自殺に至る人の多くは、生きていることの苦しみから逃れたいという衝動と、「生きたい」という願望を同時に持ち合わせ、ほんの一瞬の心の動きで不幸な結末になってしまうことがある。男性は、まさにそのはざまをさまよったということなのだろう。