
「河合さんって、フラッと死にそうになったことってないですか?」
数年前インタビューした男性会社員に、唐突にこんな質問をされたことがある。
「フラッと」というのんきな言葉を、「死」という言葉に結びつけた男性の真意が分からず、私はつい、「私……ヤバい感じですか?」と、これまた、すっとんきょうな質問返しをしてしまった。
すると男性は、「私、駅のホームで電車を待ってるときに、フラッと……ホントにフラッと……落ちそうになったことがあるんです。後ろの人に腕をつかまれて。『あ、自分、ナニやってるんだろ』って自分でも驚いてしまったんです」と、自身の経験を話した。
自殺に至る人の多くは、生きていることの苦しみから逃れたいという衝動と、「生きたい」という願望を同時に持ち合わせ、ほんの一瞬の心の動きで不幸な結末になってしまうことがある。男性は、まさにそのはざまをさまよったということなのだろう。
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この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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