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 「非正規公務員の人たちなくして、役場はなりたちません。彼らは支えが必要な住民の声を聞き、寄り添い、専門的な知識と経験で、住民のために働く人たちです。
 プロ意識も高いし、誇りを持って働いている職員が本当に多いんです。みんなね、自費で心理カウンセラーの資格をとったりしてるんですよ。
 いろんな制度の内容も熟知しておかないとダメでしょ。だから本当によく勉強している。頭がさがる思いです。

 でも、彼らの頑張りを評価する制度がないんです。昇給もなければ、昇進もない。どんなに優秀でも常勤になれるわけでもない。
 本来、彼らのスキルはお金に換算できない財産です。でも、そのスキルが非正規というだけで全く評価されないんだから、悔しいですよね。

 住民の中には、安定した公務員だから何を言ってもいいだろう、とひどいことを言う人もいる。まさか安い賃金で不安定な身分で雇われているなんて思いもしないのでしょう」

ヒューマンサービスの現場が疲弊

 講演会に行ったときにこんなふうに話してくれた課長さんがいた。

 商品の苦情処理などを行う消費生活相談員、DVなどの相談にのる女性相談員、子供たちのケアをする学童指導員や保育士……、どれもこれも公共サービスに欠かせない「人」たちである。

 その「人」のコストを削減し続けていることで、非正規公務員が厳しい労働環境に追い込まれているのだ。

 日本を見渡すと、ありとあらゆるヒューマンサービスの現場が疲弊している。
 低賃金、不安定。彼ら彼女らの“上”には、安定した高賃金の人たちがいる。

 以前、何かの会合があったときに、「なんでヒューマンサービスの賃金って安いんだろう」と、ふと私がつぶやいたらこんなことを言った人がいた。

 「例えばね、自動改札とかを考えた人たちっていうのは、生活を変えてくれたわけですよ。それってすごいことだから、そういう知的労働者の賃金は高くて当たり前なんだよ」と。

 なるほど。いわゆる「イノベーション」ということだろうか。

 だが、「私」が困ったときに支えてくれるハローワークや役場で働くのは、「私」の人生に「光」のありかを教えてくれる人たちだ。自分の傘ではどうにもならないときに、傘を貸してくれる人。人生を豊かにしてくれる存在でもある。

 そんな彼らをきちんと評価し、守る制度をもっと考える時期にきているのではないか。
 最後に、こちらのグラフも興味深いので紹介しておく。

OECD加盟国における総雇用者数に占める公務員の割合とGDPに占める公務員人件費の比較(出所/「非正規公務員酷書 」全労連公務部会)

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