雇用調整助成金は「非正規社員の保護にはつながらない」という意見もあるが、非正規雇用を増やしているのはむしろ大企業だ。例えば、2002年から2015年の間に増えた非正規雇用者の割合は、10〜99人の企業では21%増にとどまるのに対し、500人以上の企業は約2倍も増えた。
 しかも、中小企業ではパート比率は高いが、契約や派遣の比率は極めて低い。一方、大企業ではその割合が高いので、いわゆる「派遣切り」が行われているのは、体力ある大企業の可能性が高い。

 いわずもがな日本の企業全体のうち中小企業数は99.7%で、従業員数は7割弱。付加価値額は52.9%。

 また、「2020年版 中小企業白書・小規模企業白書」によれば、経営者の高齢化や後継者不足などで自主的に休廃業・解散している企業のうち、約6割は黒字企業だ。

 となれば、中小企業=ブラックだの、中小企業=生産性が低いだの、揚げ句の果てに、中小企業=ゾンビ企業、などとイメージで批判するのではなく、中小企業が培ってきた技術やスキルの高い従業員などの貴重な経営資源を残すための支援を充実させることが、重要ではないか。

 15年ほど前に、世界に認められた“ワザ”を生んだ企業を取材して回ったときも、そのほとんどが中小企業だった。従業員数十人の町工場だったり、創業100年の歴史のある小さな会社だったり。「現場の力」を信じ、社員教育に投資し、社長さんが現場を歩き回り、そこで働く人たちはみな「誇り」を持って働いていた。

 「ゾンビ企業」というネガティブなパワーワードで、健全な企業まで潰してしまっては元も子もない。
 小さくて、古いけど、しぶとい。そんな会社は決して潰してはいけないのだと思う。

コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)


河合薫氏の新刊、おかげさまで増刷が決定しました。全国の書店にて好評発売中です。新型コロナ禍で噴出する問題は、いずれも「昭和おじさん型社会」に起因している? 本コラムに大幅加筆のうえ新書化!

・「働かないおじさん」問題、大手“下層”社員が生んだ悲劇、
・「自己責任」論の広がりと置き去りにされる社会的弱者……
・この10年間の社会の矛盾は、どこから生まれているのか?
そしてコロナ後に起こるであろう大きな社会変化とは?

未読のかたは、ぜひ、お手に取ってみてください。 

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。