従って、「雇調金はいたずらに無駄な雇用を温存する」「いわゆるゾンビ企業の延命に手を貸している」などと批判するよりも、むしろ雇調金によって雇用失業情勢の最も厳しい時期を後ろに分散化させるとともに、雇用失業情勢が少し落ち着いた状態で、円滑な再就職を促進する効果を持つという前向きの効果として捉えることが適当である。この点は、雇調金の効果として、これまであまり強調されてこなかったが、重要な役割として強調されてもよいと考える――。

雇用調整助成金、失業率上昇抑制に効果

 さらに、この指摘を裏付けるのが、次の試算結果だ。

  • 雇調金のマクロ的効果試算については、リーマン・ショック時に雇調金がなければ最多離職想定で 50万人程度、 緩やか離職でも40万人程度、それぞれ完全失業者数が増加した可能性が示されている。
  • 完全失業率に換算すると、リーマン・ショックにおいて最大5.4%(平成 21年7~9月期)にとどまった失業率が、助成金の活用がなければ6%台にまで上昇した可能性も示されている。

 つまり、雇用調整助成金は失業率の上昇をかなり抑える効果を持っていると指摘しているのだ。

 また、報告書では、「パート・アルバイトも雇用調整助成金対象とした事業所」と「正社員のみ対象とした事業所」との比較をしたところ、

  • パートトタイム労働者を給付対象としている事業所は、そうでない事業所と比較して、全員を対象にしている事業所が多く、助成金の実施によってパートタイム労働者の中の選別は行われていなかった。
  • パート・アルバイトも雇調金の対象とした事業所においては、ベテラン社員が助成の対象となっている傾向がみられ、特に基幹的な業務を担う正社員以外の労働者が助成金の対象として優先されていた。
  • 助成金をきっかけにキャリアアップのための教育訓練がなされている。
  • 助成の対象となった正社員以外の労働者は、新しく雇用される正社員以外の労働者では置き換えることができない高度な人材だった。
  • など、人材開発にもつながっていたことが確かめられていたのである。

 さて、これらの結果を、どうみるか?

 私はこの結果こそが、「経営者の意地」だと理解している。

 つまり、雇用調整助成金を単なる延命に使う企業が存在する可能性は否定できない。だが、そういったネガティブな結果を基に、「ゾンビ企業の延命の手助けをするな!」といった、いわばイメージで、救える企業を救わないのは、結果的に日本の土台を壊してしまうのではないか。