潰してはならない中小企業は山ほど

 中には「地方で会社やってると、社員なんか切ろうもんなら、『あそこの会社はうちの息子クビにしたひどい会社だ!』とか言われちゃって大変ですよ。株主なんかより住民のほうが怖い。……そもそも上場もしてないけどね(笑)」なんて話をする社長さんもいた。

 とにかく、熱い。そして、温かい。小さな会社だからこそ社員一人ひとりが生き生きと働ける職場を意識した経営をし、絶対に潰してはならないと踏ん張る素晴らしい中小企業が山ほど存在するのだ。

 であるからして、体力の弱い中小企業の廃業や倒産を防ぐために、手厚い支援をすることに、個人的には大いに賛成。企業を守ることに批判的な人たちに問いたい。「で?何が問題なのか?」と。
 それに、雇用調整助成金を利用した企業の「その後」を調査した報告書をレビューすると、「企業を守ることが雇用を守ることにつながっていること」が分かる。

 労働政策研究・研修機構が、2017年に「雇用調整助成金の政策効果に関する研究」(労働政策研究報告書No.187)で、厚生労働省から提供された様々な業務データに基づき分析をしているのだが、その中の「時系列データ」に基づく分析結果が実に興味深い。その一部を紹介する。

 と、その前に。報告書の分析は、2008年4月〜2013年3月の5年分のデータを使用しているので、リーマン・ショックと東日本大震災とで、雇用調整助成金の支給要件等が大幅に緩和などされた時期なので、今回のコロナ禍の参考になると思われる。

時系列分析の結果は以下の通りだ。

  1. 雇用調整助成金を受給した事業所では、事業面で厳しい状況にあることが一般的で、非受給事業所に比べて、雇用が低調ないし減少で推移していた。
  2. 受給事業所は、非受給事業所に比べて、受給期間中を中心として、入職率を相対的に低く抑えていた。
  3. 受給事業所では、受給期間中を中心に、総じて離職率も相対的に低く抑えられていた。
  4. 受給事業所の雇用変動は、受給終了直後に大きな離職を生じて雇用調整が進んでいた。
  5. 受給事業所の廃業が雇調金受給終了後に集中していた。
  6. 製造業について、景気回復期以降は、リーマン・ショックの期間のみ受給した事業所の雇用の低下が最も小さかった。

 上記の結果を踏まえ、この報告書は、次のように指摘している。

 ――4の「受給終了後に大きな離職が生じている」、5の「受給事業所の廃業が受給終了後に集中する」という結果は、「雇調金はいたずらに無駄な雇用を温存する」、さらには「いわゆるゾンビ企業の延命に手を貸している」、「産業構造の転換を遅らせている」などの批判に通じる面もあると考えられる。

 しかしながら、支給対象の労働者は当該事業所の中核的に必要な部分である場合が多く、事業主は出来得る限り雇用を維持しようと努めているものの、好転が望めないとの見切りができた事業所においては、受給期間中であっても解雇を含めた厳しい雇用調整に踏み切るところも少なくない。ただし、たとえ離職を余儀なくされる場合であっても、需給状況がある程度改善するのを待って離職することができれば失業期間も短くて済むことを意味している。

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