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 そして、実際に数年前に公開された、JAL123便のボイスレコーダーには、先輩たちが信じていたことが残されていた。



機長(墜落32分前)「まずい、何か爆発したぞ」
機長(墜落6分前)「あたま(機首)下げろ、がんばれ、がんばれ」
副操縦士「コントロールがいっぱいです」



 公開されたコックピットで格闘する高濱雅己機長(当時49歳)と佐々木祐副操縦士(当時39歳)の声からは、キャプテンたちが最後の最後まであきらめず、最後の一瞬までお客さんの命を守るために踏ん張っていたことが分かるものだった。

 コックピットクルー、客室乗務員の最大の任務は「お客様の大切な命を守る保安要員」だ。
 私はそのことを新人教育で教官から言われ続けた。だが、その教えを理解するまでにはかなりの時間がかかった。

「ミッションを自分と一体化させる」ことの意味

 フライトの度に先輩から言われ、FE(航空機関士)さんからたくさんのマニュアルの入った大きなパイロットケースを持たされ、「重たいだろ? これが僕たちが人命を預かっているという仕事の重さだ」と教えられ、整備さんからは、「小さなことでも声に出して確認しながら整備しなきゃダメなんだ」と聞かされ、そして、あるとき自分が“失敗”し、「どんなにいいサービスをしても、保安要員であることを忘れたら、飛んでいる意味はない!」と、こっぴどく怒鳴られ、やっと、本当にやっと、「なぜ、何のために、自分がここにいるのか?」という仕事への信念=ミッションが、皮膚の下まで入り込んだ。

 おかげでいまだに、緊急時の衝撃防止姿勢や脱出用のスライドを滑り降りるときの確認事項が即座に言えるし、CAを辞めた後の仕事でも、常に「なぜ、何のために、自分がここにいるのか?」を考えるようになった。

 “ミッション”を自分と一体化させないと、必ずぶれる。そこに例外はない。

 想定外の危機に遭遇しても、骨の髄までミッションが染み込んでいれば、「自分のなすべきことは何か? 自分にできることはどういうことか?」と、自らの正義に従い、危機に対峙できる。
 自分がやるべきことに徹することで、最高の選択が可能になる。たとえそれが万事を解決せずとも納得できる行動が取れる。

 一方、ミッションが忘れられてしまうと、効率性だけが重視され、自分の存在意義を自ら壊し、本来やるべきことがないがしろにされてしまうのだ。