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(写真:Shutterstock)

 「夫は改ざんしたことを罪を犯したのだと受け止め、国民の皆さんに死んでお詫(わ)びすることにしたんだと思います。夫の残した『手記』は日本国民の皆さんに残した謝罪文だと思います。国は、夫の自死の真相が知りたいという私の思いを裏切り続けて来ました」──。

 これは7月15日に行われた第1回口頭弁論(大阪地裁)で、赤木雅子さんが行った意見陳述の一部である。雅子さんの夫・赤木俊夫さんは、財務省近畿財務局の上席国有財産管理官。学校法人森友学園との国有地取引を巡って財務省の上司に公文書の改ざんを強いられ、それを苦に命を絶った。

 今年3月、雅子さんは、「真相を知りたい」といういちるの望みを懸けて「手記」を公表し、裁判を起こす決意をした。

 赤木さんの手記が公開された際、こちらのコラム(「パワハラ死」の遺族までも追い詰める雲の上の絶対感)でも取り上げたが、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していた時期と重なり、メディアでの手記の扱いは小さかったし、国会で取り上げられたりもしたが、どれも一時的だった。悔しいけど、完全にコロナ問題に覆いつくされてしまっていた。

 そして、今回。国と佐川宣寿元財務省理財局長に対し、約1億1200万円の損害賠償を求めた裁判が始まったわけだが、またもや東京を中心とするコロナ感染拡大プラスGo To ナンチャラ問題と重なってしまっている。

 手記公開に至るまでの雅子さんの心情を考えると、コロナ問題に埋もれることなく、一人でも多くの人に裁判の行方を見届けてほしいと心から願うし、メディアのインタビューに精力的に対応している雅子さんの心情をおもんぱかると胸が締め付けられる思いがする。

組織の“尻尾切り”が壊した人生

 改めて言うまでもなく、この問題は連日のように国会やマスコミに政治問題として取り上げられ、世間を騒がせた「森友学園への国有地売却問題」に起因している。前代未聞の文書改ざんという禁じ手に財務省が手を染めたのに、麻生太郎大臣は「理財局の一部の職員が書き換えた」ものとし、売却の経緯も含め問題の真相は明らかになっていない。

 しかも、森友問題が表面化したのは、売却されて半年以上たった2017年2月9日に、朝日新聞が取り上げたことが発端である。赤木さんは森友学園との売買契約締結(16年6月20日)には一切関わっておらず、どういった経緯で8億円の値引きが行われたかを全く知らないのだ。

 にもかかわらず、赤木さんは文書改ざんを余儀なくされた。そして、「最後は、下部が尻尾を切られる。なんて世の中だ。手が震える。怖い。命、大切な命 終止符」──というメモを残し、2年前の3月7日、命を絶った。

 その日の朝、赤木さんは雅子さんに「ありがとう」と言葉をかけたが、「最後の夫の顔は、『絶望』に満ちあふれ、泣いているように見えました」と、雅子さんは先の意見陳述で語っている。

 前回このコラムで取り上げたときは、「パワハラを生む組織」という視点で、「真面目で、職務に忠実で、家に帰れば優しい夫(妻)であり、自慢の息子(娘)が、トップ=雲の上の人のたった一言で人生をめちゃくちゃにされてしまうのである」と書いたが、今回は別の視点から組織の問題を考えてみようと思う。