全5568文字
(写真:Shutterstock)

 新型コロナ感染防止策で、いつも以上に“勝手にひとり在宅勤務”が4月以降続いていたのだが、少しずつ外の方たちとリアルにお会いする仕事が入るようになった。

 社長さんとの対談や鼎談(ていだん)、リモート講演会やセミナー、会社の役員さんたちとの意見交換会などなど、年齢や職種、企業規模はバラバラだが、久しぶりに会う皆さまの関心は、もっぱらこれからの働き方、働かせ方だった。

 今風の言い方をすると、“アフターコロナ”における“ニューノーマル”といったところだろうか。

 が、何か以前と違う。

 なぜかこの数日間お会いした方たちから紡がれる言葉には、生臭さがなかった。これまで現場の人たちの言葉には、独特の温度があり、あまりのドロドロした粘っこさに、「人間って……大変」とため息をついたものだった。ところが、今回はどの会合でもそれが全くといっていいほど無い。

 アフターコロナという、いつの、どこの、どういう手触りかも分からない世界の話をしているからなのか。ニューノーマルという電車に「乗り遅れないようにしなくちゃ!」という焦りからなのか。とにもかくにも、耳を傾ければ傾けるほど、話の論点があさっての方向にずれ始めていくのだ。

大企業に広がる「ジョブ型」志向

 特に、「ジョブ型」の話題になると(これはどの会合でも出た)、かなり微妙だった。いや、微妙とは失礼、私が皆さんのお話を聞きながら、「なんか……微妙」と思っただけなので、お許しください。

 要は、ジョブ型とセットで語られる、生産性だの、優秀な人材だの、評価だの、解雇規制だのという言葉のオンパレードに、私の脳内のサルやトラが大暴れし、「これってバブル崩壊後のあの時と一緒じゃん」「要は成果主義だろ!」「ホワイトカラーなんちゃらというのもあったよね!」と、ジョブ型という言葉の片隅に、デジャブ感、を抱いている。

 ……いきなり辛口だが、仕方がない。トップの“あさって思考”は、決まって現場に強い副作用をもたらすものだ。結果として、その痛みは立場の弱い人ほど深刻になる。

 というわけで、今回は「覚悟なきジョブ型の末路」について、あれこれ考えてみる。まずは簡単に「ジョブ型」のおさらいから。

 ジョブ型雇用は仕事内容を詳細に記述したジョブディスクリプション(JD、職務記述書)に基づいて働く雇用制度のこと。新型コロナウイルス禍を機に、多くの企業で関心が高まっていて、すでに、日立製作所、資生堂、富士通、KDDIなどが、ジョブ型の導入や拡大を発表している。

  • 日立製作所では10年前からジョブ型を取り入れていたが、今後は在宅勤務とジョブ型を同時に拡大し、「職能型」で雇用している国内の一般社員約3万人を対象にJDを作成、21年3月までに完了させる予定。
  • 資生堂は、来年1月から一般社員3800人をジョブ型の人事制度に移行する。魚谷雅彦社長によれば、ジョブ型はあくまでも「究極の適材適所」であり、成果主義とは異なるとのこと。「この仕事は何が必要か」を細かく説明し、性別、年齢、国籍などにかかわらず、一番ぴったり合う人を配置するという。
  • 富士通では、すでに4月から管理職1万5000人にジョブ型の人事制度を導入したが、今後は一般社員全員に拡大する予定だ。テレワークを基本とし、雇用をジョブ型に転換する想定の中で、社員に自律的な成長を促す狙いがあるという。
  • KDDIは、2020年度入社向け新卒採用で実施していたジョブ型採用枠を約4割に拡大し、あわせて2021年度入社向けの新卒採用から、選考期間の決まった一括採用から通年採用に変更すると2019年末に公表している。