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(写真:Shutterstock)

 水曜日の夜(27日)、テレビを見ながら思わず「ダメダメ、それ食べちゃダメよ!!」と、まるでお節介ババアのように叫んでしまった。

 画面に映し出されていたのは、はにかんだ笑顔で、鬼のように芽が出たじゃがいもを手に取る女子大学生。彼女はその数十秒前に、「こうやってしょうゆ漬けにすると、長持ちするんで」と、生活費節約のためにそのへんに生えていた野草を採ってきて食べていると話していた。

 なので、「ま、まさか、この段ボール箱の中に積み上がった芽が出まくったじゃがいもを、食べちゃったりしないよね??」と、心配になってしまったのだ。

 実はこれ、某報道番組で流れた“困窮する学生”のミニ特集。学生は国立大に通う4年生だ。

 女子大学生は友人3人とアパートに同居し、家賃なども含めた月の生活費5万円はクリニックの受付のバイトで稼いできた。ところが、クリニックが休業し、収入が途絶え、生活は困窮する。

 「とにかく、もうお金もないし、すごく恐怖心があって、怖くて怖くて。不安を通り越して恐怖だった」という。

 とまぁ、ここまでならあちこちのメディアで報じられている「生活に困る学生」となんら変わりはないのだが、この番組は「学生の本分」、すなわち「学び」の日常がコロナ禍で制限されたことまで取材していて、かなり共感した。

 大学がコロナの感染拡大防止で閉鎖されたため、授業はオンラインで行われていた。論文などもある程度は、無料でネットで見ることができる。だが、専門書は無理。一冊4000〜5000円するので、買いたくてもすぐ手を出せる値段ではない。

 それまでは大学などの図書館で借りていたけど、大学も図書館も閉鎖しているのでどうすることもできないリアルが、彼女を追いつめる。

 「学生で、アルバイトやって生活するというのが、こんなに弱いというか、低い立場なんだなとすごく痛感しました」(by 女子大学生)

 生活と学びの両方が急変し、“社会の自分の位置”を思い知らされてしまったのだという。

 ……そう。学生は弱い。困窮する学生は弱い。ブラックアルバイト、なんて言葉も使われたけど、世間が冷笑する「たかがバイト」が命綱で、それまで「自分の努力次第」と思っていた勉強まで制限されてしまうのだ。

大学での学びにはお金がかかる

 個人的な話になるが、私も大学院で痛感したのは、「お金がないと学問はできない」ということだった。まず学費が高い。特に、理系は高い。専門書も高い。特に医学書や洋書は高い。1万円を超えるなんてざらだったし、どうしても手元に置いておきたい本以外は、学内の図書館で借りて過ごした。

 論文も大学からは無料でアクセスできるが、家からだとお金がかかる。特に、海外の原著論文は専用のサイトからじゃないと入手できない。教員になると大学のIDで入れるけど、学生はダメ(大学によると思うが)。

 しかも、どんなにネットで見られる論文でも、プリントアウトが必要になる。テクニカルタームや分からない単語の意味を調べ、書き込んだりすることもあれば、研究の進捗次第で同じ論文でも読み返すと「お! ここだ!」というポイントも変わるので、手元に置いておきたい。

 たかが、印刷。されど印刷。学内なら無料で済む印刷代が、学外だと結構な金額になってしまうのだ。

 既に独立して生計を立てていた私でさえ、学問にかかるお金に悲鳴を上げていたのだから、自活する学生が耐えられるわけがない。