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(写真:Shutterstock)

 数年前、40代の男性のインタビューで、思わぬ告白をされたことがあった。

 「お恥ずかしい話なんですけど……、僕、半年前はホームレスやってたんです」

 目の前に座っているスーツを着た男性は、ごく普通のサラリーマン。その彼から、「ホームレス」という言葉が飛び出して面食らった。というか、私は正直なところ、何の話をしてるのか一瞬分からなくなった。

 河合「えっ……と。それって……」
 男性「派遣切りにあって、次の仕事がなかなか見つからなかったんです。それで家賃も払えなくて、ひと月くらいですけどね」
 河合「で、そのあとが、今の会社ですか?」
 男性「はい。そうです。ハローワークに行くときに、昔、飲みに行ってた焼鳥屋のマスターにばったり会いましてね。『お客さんの会社で体調を崩して入院する社員がいて、時間をかけて採用してる余裕もないから仕事の一部をバイトに頼みたいと言ってた』と、すぐに連絡してくれたんです」
 河合「今、契約社員……ですよね?」
 男性「はい。バイトなのに、上司の人がすごく丁寧に仕事を教えてくれたんですよ。不思議なもんで、そうやって扱ってもらうと自分でもいろいろと工夫するようになって、ひと月後に『契約社員にならないか』って言ってくれたんです。時給が月給になったし、がんばれば正社員にもなれると言われました。生まれて初めて仕事って楽しいって思えました。僕は本当に運が良かった。ホント、運が良かったんだと思います」

 「貧困は簡単に外から見えない」。彼の話を聞き、強く実感した。

新型コロナの影響で貧困問題も表面化

 先週、NPO法人しんぐるまざあーず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長が、新型コロナウイルスの影響で困窮するシングルマザーについてコメントしていた。その内容があまりに衝撃的で、今回は「見えない貧困」を取り上げようと思った次第である。

 赤石氏によると、4月以降、シングルマザーからの相談が急増し、「子供がおなかをすかせていても、食べさせるものがない」「公園の水や野草で空腹を満たしている」などの、驚くべき内容もあったそうだ。

 多くがパートなどの非正規で雇用されているため、自宅待機で収入が減るという人が半数以上。中には、子供の保育園が休みになったと相談したら、「だったら来なくていい」と言われたケースもあった。

 「私たちの感触では、本当にいつ悲惨な事件が起きてもおかしくない」。こうコメントしていた(5月21日付朝日新聞朝刊)。

 新型コロナウイルス感染が拡大した当初から、「今起きている問題はこれまで見ないふりをされたり、だましだましやり過ごしたりしてきた問題が表面化しただけ」と書き続けているけど、貧困問題はその1つだ。

 しかしながら、貧困問題を取り上げると、「公園の水と野草食べるなんて人、本当にいるの?」「昔の方がもっと貧しい人が多かった」というリアクションが少なくない。