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(写真:Shutterstock)

 いったい何を信じたらいいのか。私の頭は少々混乱している。

 この国の情報の透明性はどうなっているのか。「数字」にまつわるさまざまな問題は過去にもあった。だが、今回の「19人から171人」の数字とそれを巡る報道には、絶望にも近い感情を抱いている。

 まずは、ことの顛末(てんまつ)を説明しよう。

 全ては5月10日の日曜日の昼、ネットニュースを見たことが始まりだった。「東京の死者19人から171人に」との見出しに驚き、記事をクリックしたところ、厚生労働省が新型コロナウイルスの集計方法を変更し、「8日時点の東京都の死亡者数を『19人』から『171人』に大幅修正した」とある。

 「桁が違うとはただ事じゃない!」と慌てて、テレビのニュースをはしごするも、どこも報じていなかった。

 私は東京都の「都内の最新感染動向」のページを毎日チェックしていたので、桁が違うというのはどうにも合点がいかない。

 しかも、通常ニュース報道では特ダネの場合「○○が入手した情報によると」などと、「俺たちやりましたぜ!」と前置きをつけるものだが、それもなかった。

 「ということはフェイクニュースか?」と、検索しまくるのだが、一部メディアの動画は繰り返し報じられ、書き起こされたテキストも掲載され、フェイクではなさそうだった。

東京都の死亡者「19人から171人」はなぜ起きたのか

 それであれこれ情報を探していたら、日本経済新聞の「新型コロナ集計見直し、都道府県HPを参照 厚労省」(5月10日配信)という見出しを発見した。

 記事によれば、

  • 厚労省が感染状況の集計方法を、「都道府県から報告される感染者の情報を1人ずつ積み上げる方式」から、「都道府県のホームページを参照する方式」に改めると発表
  • 感染者の病状や退院などの国への報告が滞っていることが理由
  • 退院者数は8日正午時点では5889人と公表していたが、9日午前0時時点で8110人と急増
  • 新規感染者数の集計に影響はない
  • 同省によれば、3月下旬以降、感染者が急増した一部自治体からの情報更新が遅れ始め、「症状有無確認中」の感染者が5000人を超えるなど正確な実態を公表できなくなっていた

 とのことだった。

 日経新聞と同様の記事は他のメディアにもあったが、どこをどう探しても「19人から171人」というのはなく、感染者数の増加を報じるだけで、死亡者の桁が違うとはどこにもない。続報もなかった。

 キツネにつままれたような気がしたまま、翌日(12日月曜)の夜、メディアのニュースを見ていたら、再び脳内が大混乱する情報が流れた。

 コロナ関連のニュースをまとめたVTRに、予算委員会で「19人から171人問題」が取り上げられている映像が混じっていたのだ。

 国民民主党の玉木雄一郎代表が、「(19人から171人に修正された)報道は事実か」と尋ねると、加藤勝信厚労相が「見ていないので分からない」と答弁。そこで、玉木氏が「171人に修正された事実をご存じないのか」と再び問いただすと、「いつの、どういう報道ですか」と戸惑う加藤大臣の顔が映し出された。

 ところがVTR明けのスタジオではこの問題にいっさい触れず、「19人から171人問題」は再び闇の中へ葬られてしまったのだ。