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(写真:Shutterstock)

 緊急事態宣言が延長され、外出自粛状態が続いているが、みなさんはお元気だろうか。

 ひと月以上、当たり前が当たり前じゃなくなった世界で、先行きの見えない状態は実に苦痛だ。私自身、最近になってやっと慣れてきたけど、つい数日前まではちょっとしたことでイラついたり、「このままで食っていけるのか?」と曖昧な不安を感じたり。

 講演会やコラムでは、「不安の反対は安心ではない。半歩でも4分の1歩でもいいから前に進むこと」などと、のたまっているのに実に情けない。

 目の前にやるべきことはあり、それを必死にやっているのに、「世界の価値観が根本から変わるかもしれない」という思いが頭をよぎると、「私も大きく変わらなきゃだめなのか?」と強迫観念が襲いかかる。20年以上ストレス研究をしてるのに、ストレスにちっとも強くならないのだから、人間とはやっかいな生き物だなぁとつくづく思う。

 というわけで、今回は「新型コロナウイルス禍の心の問題」をテーマにあれこれ考えてみる。

 WHO(世界保健機関)は3月、コロナ感染のパンデミックで、世界中でうつや不安障害の症状を訴える患者が急増しているとし、「Mental health and psychosocial considerations during the COVID-19 outbreak」(「新型コロナウイルス感染症アウトブレイクに関するメンタルヘルス指針」)を発表した。

失われた「日常」が心の健康を脅かす

 内容は一般の人向けに加え、特にメンタルサポートが必要な医療従事者などのヘルスケアワーカーと管理する人々、子供、高齢者、病気などを患っている人、孤独を感じている人々ごとに、それぞれ心を健康に保つ方法や行動を示している。

 詳しく知りたい方はこちらを読んでいただくとして、新型コロナ禍によるうつは世界中に広がっていて、カイザー財団が3月下旬に実施した調査では、成人の45%が感染拡大で精神的な影響を受けたと回答。日本でも心の相談窓口への相談が連日相次いでいるという。

 コロナうつが広がっている最大の理由は、感染拡大防止策としてロックダウンをはじめとする「人との接触」が遮断されたことだ。つまり、コロナウイルスそのものより、例えば、会社の同僚や上司、部下との会話や行きつけのお店で仲間と一杯やりながら交わすくだらない会話、そういった日常の他者との「ルーティンの喪失」が心身のダメージとなっているのだ。

 ここでいうルーティンとは、2人以上のメンバーを巻き込んだ観察可能な日々の反復性のある行動で、 誰かと一緒にやるのが当たり前になっている「日常」である。ルーティンは代わり映えしないことの繰り返しなので軽視されがちだが、実際には「生きる土台」をつくる大切な行為だ。

 人間は生物学的に、周期性、規則性のある行動を好む傾向があることに加え、社会的動物として1日のリズムが他者と共にあることで、肉体的にも精神的にも安定する。