いや、違う。

 世界に目を向ければ、同じように社会的に高い地位にいても、「彼らの顔」を真っ先に思い浮かべ、「彼らが今日生き抜ける」ように具体的に動いたリーダーはたくさんいた。

 ドイツにいる知人に連絡をしたところ、次のような返事がきた。

 「ミュンヘンは外出禁止令が出る前から、これこれは通常通りやってもいいですよ、と、できることを明確に説明していました。健康のための散歩、ジョギング、サイクリングは、一人、または家族、同居人となら複数でもよいと定義も明確に示されました。同居カップル、内縁の妻なども堂々と公園で濃厚接触可能です(笑)。

 外出制限令が出て3週間目ですが、長い冬がやっと終わったドイツ人にとって家でじっとしていられるわけがなく、地元の公園はコロナ前と同様の人出です。私もランニングしたり、マウンテンバイクで遠出したりしています。

 ドイツには音楽家をはじめ、たくさんのフリーランスがいますが、申請した3日後には、5000ユーロ(約58万円)が銀行口座に振り込まれていた、うれしい!という話が、ちらほら聞こえてきます。

 色々と制限はありますが、不安は最低限に抑えられています。

 ドイツは外出制限令が5月3日まで再延長されました。一方、売場面積が800平方メートル以下の店は開けてもいいよといったように、明るい兆しも小出しにしつつ、引き続き気を引き締めてとの注意喚起も忘れず、うまい政策だなと思いました。学校は最終学年から再開するというのも合理的ですね。

 今やメルケルさんは、ドイツの“おっかぁ”的な存在です。CDU(ドイツの与党第1党、キリスト教民主同盟)の人気も盛り返してきました」

求められる生身の個人に向き合う政策

 「他国と比べるのはおかしい」「日本だってやっている」「すべてが終わらないと検証できない」と言う人たちもいるけど、今回紹介した人たちは特別な人たちなのだろうか? 「自分が聞いた人だけの話をするのはおかしい」と、また批判するのだろうか。

 私は大学院のときに「量的な調査は実態に合わないことがある」と何度も教育された。

 臨床でドクターを経験したのち大学院に戻った先生が、「量的調査に基づく政策が、ちっとも現場では役に立たないと感じ、再び大学に戻った」と語ってくれたこともある。

 「質的調査は、個人的な意見で汎用性がないって非難する人が多いけれど、現場でホントに生かされるのは、生の個人的な意見だ」と。

定年後からの孤独入門』(SB新書)


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